あれから何日か過ぎていた。ベルとアランの仲直りに加えて、新たに仲間となったソフィアとローも打ち解け始めて賑やかな旅が続いた。
時には機械と戦い、時には獣と戦い、疲れる時もあるけれども太陽を探す旅はルフにとって確実に自分を大きくする何かを秘めていると感じていた。
「そろそろ村があると嬉しいのだけどね」
「確かにそろそろ見えると嬉しいのだけど」
「ベルくんとソフィアくんの言う通りだね。資源は確保してるとはいえ、情報がないんじゃ太陽がいつまでも見つからないもんね」
ベル、ソフィア、ローの三人はルフとアランの後ろからついていきながら、おしゃべりをしているのが聞こえてくる。
アランは黙ってはいるものの、思うところはあるようで、背負っているリュックの紐を強く握りしめていた。
この数日間村に辿りつけていないし、旅人ともすれ違ってはいない。
まだ、食料はあるものの新たな太陽の情報も得られていない現状は精神的に堪えるものがある。
どうかイグニス神様村を見つけさせてくださいとルフの願いを聞き届けたのか、遠くに鉄の固まりらしきものが沢山存在している。
鉄の悪魔かとルフは構えたが、アランが停止させるようにルフの前に手を出すと、静かに呟いた。
「あれは、オレの故郷だ」
「えっ! アランの故郷なのか?」
アランの言葉にルフは目をまん丸くした。近づいていくと鉄の悪魔かと思ったものは、
どうやら鉄の悪魔から剥ぎ取ったもの。よく見るとちぐはぐであり、立派な建物のように見える。
それだけじゃない。明かりも火ではなく、黄色い明かりを放っており、鉄の悪魔を連想させるものがある。
村の入り口には、鉄の板にて読めないが文字が書かれていた。恐らく村の名前だろうとルフは分析をした。
「もしや、アランではないか?」
村長らしき四十代ぐらいの黒を纏う男性がアランに話しかける。
その声に導かれてか鉄の家から、恐らくケラー教と思われる村人達が現れる。
皆アランに対して元気だったかとか、無事で何よりだと言っている辺り本当に故郷なのだと四人は感じていた。
そして、こんな遠くから自分達の故郷ナチャーラ村まで来ていたのかとルフとベルは驚きを隠せなかった。
「そういえばこの四人はアランの仲間か?」
そして、村人達はルフ達の存在に気が付くとアランに話しかけてくる。
内心ルフは焦っていた。
イグニス教は異教徒であるケラー教を迫害する傾向にある。
自分達はイグニス教だ。迫害されてきた事実は消せるものではないだろう。
自分達が迫害受ける側になっても仕方がないが、アランまで危害が及ぶのではないかと思うと胸が苦しかった。
実際、イグニス教の村に訪れた際は、身分が高いと分かるベル以外はいい目を向けられることは少なかったから。
「あぁ、仲間だ」
緊張する四人に対してアランは冷静に答えた。
まるで当たり前かのように答えるアランに対して村長と思われる人はにっこりと笑いかけてくれた。
「そうかそうか。アランの仲間か。遠くからよく来てくれたね。ここはノワル村というんだ。自分の故郷だと思って寛いでくれて構わないからね」
村長の言葉に賛同するかのように周りの村人達もそうね、それがいいわと言い始めてすっかり歓迎モードになっていた。
その様子にルフ達は緊張がほぐれていく。
アランもそれを感じたのか表情は無のままだが、目だけは安堵の色を滲ませていた。