「アランからしたら、懐かしいじゃないかな?」
「そうだな。懐かしい。この水汲みもよくやらされた」
水汲みへと向かったルフとアランは鉄のタンクを持ち、川から流れる水を汲んでいく。
川はいつも薄く氷を張っているから叩き割るのだが、ルフはその作業が好きだった。
だから、よく故郷でも水汲みをしていたのだが、汲む時には鉄のバケツだったが、ノワル村では違う。
鉄のタンクに何やらホースがついていて、それを川につけると自分で汲んでもらえるから、冷たい水に手を突っ込まなくていいし、一度に沢山の水を汲めるのがいいなと感じた。
アランは慣れた手つきでボタンを止めると二つとも水が満杯になったようで背負うとバケツ以上に重い。
ルフがよろめきそうになっているの心配そうに見るアランに、ルフは笑みを見せる。
「大丈夫。思ったより重たかっただけだから」
「そうか。無理はするなよ」
アランのさりげない気遣いがルフは好きだ。
ベルが熱を出した時もそうだが、彼は冷静だけど、冷たいわけではない。ちゃんと心が暖かい人だ。
だから、村人の人も暖かく迎えてくれたのだろう。
そう思うと以前言っていたアランの父に会えたならいいのになと思う。
生きている保証はないとはいえ、きっと会えずに終わったらアランは未練を抱えたまま生きていかなきゃいけないと考えるとルフは自分のように悲しくて苦しく感じた。
せっかくアランの故郷に来たのだから、アランの父についてを聞いてみたらいいかもと思っていると、美味しそうな匂いが漂い始めた。
村が近づいて来たのだろうと分かると、ルフのお腹の虫が鳴いている。それを聞いたアランはクスリと可笑しそうに笑う。
「久しぶりのご馳走だから待ち遠しいな。早く帰って食べようか」
「う、うん! アランも久しぶりの故郷のご飯だしな。俺のお腹ペコペコだよ」
お腹の音を聞かれて恥ずかしく思うルフは、若干顔を赤くしながらも早く村に帰ろうと言い駆け足になっていく。
後を追うようにアランの足並みも早くなっていけば、いつの間にかどちらが早く着くかの競争になっていった。
白い息を吐きながら歩く道はとても輝いていて綺麗に見えたのは勘違いではないだろう。そう、ルフは信じたかった。