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第031話 ま、まあ、個性って大事よね!


 私は皆に指示を出した後は村や平原で作業をしている子達の慰安を行っていた。

 皆、頑張ってるようだったし、私が行くと嬉しそうだった。

 皆の笑顔を見ると、私も嬉しい。


 その後は基本的にはキャンピングカーの中でゴロゴロしている。

 私は今、ミサと隣同士で座っており、休んでいた。

 なお、東雲姉妹はテーブルを挟んだ対面でだらけている。


「ひー様、暇だよー」

「森はもう飽きたよなー」


 この数日、川で釣りをしたり、森へ冒険という名の魔物狩りをしていた東雲姉妹が愚痴る。


「もう飽きたんですか? もうちょっと待ちなさい。獣人族が来るまでは辛抱しなさいよ」


 ホント、飽き性なんだから。


「だって、獣人族の村もここも森じゃん。もう緑は飽きた」

「そうそう。早くドライブに行こうぜ」


 どうせ、ドライブも数日で飽きるんだろうなー……


「トランプやオセロでもしてなさいよ」

「いや、それはさすがに飽きるじゃん」

「あたしらJKよ? もうすぐで19歳だよ?」


 そこまで言うならもう少し、落ち着けばいいのに……


「仕方がないですねー。ゲームを出してあげるからそれでもやってなさい」


 私は携帯ゲーム機とゲームソフトのセットを2つ出して、東雲姉妹に渡した。


「…………え? ゲームボー○? レトロすぎん?」

「しかも、カラーですらない……」


 うるさいな。

 それしか持ってなかったんだからしょうがないでしょ!


「何か?」

「い、いえ……」

「…………姉貴、しかも、最初のマリ○だ」


 フユミがナツカに耳打ちする。


「フユミ? 何か言いましたか?」

「い、いえ……姉貴、どっちが先にクリアするか勝負しようぜ!」

「だ、だな!」


 2人は姉妹仲良くゲームをしだした。


「うんうん。姉妹は仲良くしなさいね。ミサもいりますか?」


 私は本を読んでいるミサにも聞いてみる。


「私は小説を読んでいるから大丈夫です」


 さすがはメガネ。

 読書好き。


 私は暇になったので東雲姉妹に出したゲームを出し、やってみる。


「……どうやんだっけ? あ、これがジャンプか…………あ、死んだ」


 つまんね。


「早いですねー。ひー様はゲームをやらないっけ?」

「そういえば、やってるところを見たことがない」


 ゲームに夢中だった東雲姉妹が顔を上げて聞いてくる。


「そういうのはやりませんね」


 ゲームがあるような家庭環境ではなかった。


「子供のころは何してたの?」

「おままごと?」

「ミサと遊んでました」


 懐かしい。


「…………イジメって言うんですよー」


 ミサが顔すら上げず、ポツリとつぶやく。


「私をいじめっ子キャラにするのをやめてくれない? ちょっといたずらをしただけじゃん」


 名誉棄損ですわー。


「そのゲームボー○、私のですよ…………」


 え!?

 あれ?

 ………………そうだったっけ?


「ミサ、何か飲みます?」


 ニコニコ。


「カフェオレを下さい。ちなみに返してもらっていませんね」


 あわわ。

 私、また借りパクしてるし。

 しかも、まったく覚えていない。


「ケーキ食べる? あ、返すね」


 私は机の上にケーキを出し、携帯ゲーム機を置いた。


「いや、今さら返されても……それ、親のですし、別にいりませんよ」


 ……………………。


「ナツカ、私のことをどう思いました?」

「ジャイア○!」


 姉はダメだな。


「フユミ、私のことをどう思いました?」

「ジャイア○!」


 妹もダメだったわ。


「ミサ、ちゅーしてあげようか?」


 んー?


「キモいですって。そういうのはリースにしてあげてください」


 やだよ。


「ひーさまー! いらっしゃいますー?」


 私がちょっと気まずい思いをしていると、車の外から村上ちゃんの声が聞こえてきた。


「村上ちゃん? なーにー?」


 私は車の中から大きな声で返事をする。


「篠田さんが話があるそうなんで、連れてきたんですけどー」


 篠田?

 めっちゃ泣いてた篠田さん?


 私は思わず、ミサの顔を見た。

 ミサも驚いたようで、私の顔を見てくる。


「篠田さんが何の用かな?」

「さあ?」


 うーん、あんだけ泣いて、恐怖していたくせに、よく私に会おうと思うな……

 暗殺ではないだろうし、何だろ?


「わかりました。入りなさい」


 私がそう言うと、東雲姉妹が素早くナイフを取り出し、自分達のお尻の下に敷いた。

 一応、護衛役はちゃんとするのだ。

 篠田さん相手にはいらないけどね。


「失礼します」


 村上ちゃんがそう言いながら扉を開け、中に入ってきた。


「おや? ナツカさんとフユミさんもいらっしゃったんですね? しかも、またその服……」


 村上ちゃんがメイド姿の東雲姉妹を見る。


「いちゃ悪いか? メイドで悪いか?」

「かかってこい、ポリ!」


 ナツカが肘をテーブルに置くと、フユミがシャドウボクシングをした。


「ナツカ、フユミ、村上ちゃんにケンカを売らない。どんだけ世話になったと思っているんですか……」


 不良姉妹め。


「さーせん。村上ちゃん、ごめんね」

「さーせん」


 東雲姉妹が素直に謝った。


「いえいえ。ほら、篠田さん」


 村上ちゃんが車外にいる篠田さんを入るように促す。


「し、失礼します!」


 篠田さんは相変わらず、震えたままだが、村上ちゃんの服を掴みながら車内に入ってきた。

 篠田さんは学校の制服を着ており、前に見た時のように小汚くない。


「おうおう! 小動物が何の用だ?」

「おうおう! イジメちゃうぞ…………あ、キノコが落ちた」


 東雲姉妹は顔も上げずにゲームを再開しながら篠田さんを脅す。


「お前達は黙って、ゲームをしてなさい」

「「はーい……って、あ、死んだ」」


 黙ってろ、バカ姉妹。


「篠田さん、何の用でしょうか? あ、いや、待ちなさい。お茶くらいは出しましょうか…………キャラメルマキアートでいいですか?」


 私は優しく微笑んだ。


「あ、いえ、その…………じゃあ、もらいます」

「ひー様、私も」

「私はオレンジジュースがいい」

「あたし、リンゴ!」


 ミサと東雲姉妹が便乗してきた。

 ってか、ミサはもうカフェオレを飲んでんじゃん……


 私は文句も言えないので、ミサと篠田さんにキャラメルマキアートを渡し、東雲姉妹にオレンジとリンゴのジュースを渡す。


「村上ちゃんも何か飲みますか?」

「じゃあ、ビー…………麦茶をお願いします。まだ仕事中なんで」


 ビールって言おうとしたな?

 悪い警察官だ。


 私は村上ちゃんに麦茶を渡すと、皆が飲み物を飲みだした。


「それで篠田さん、用とは?」


 私は本題に入る。


「あ、はい。えーっと、実はエルフの皆さんから幸福教団が奴隷となったエルフの解放に動いていることを聞きました。実は私はエルフの奴隷を見たことがあるんです」


 ほう……

 情報提供に来たのか。

 しかし、そんなことは村上ちゃんに伝えればいいだろうに。


「なるほど。それは有益な情報ですね。村上ちゃん、場所や人数などをまとめてください」


 さて、どうするか……

 助けたいのはやまやまだが、今は人材が不足している。

 当然、エルフや獣人族は町には入れないし、自分達かハーフ達に任せるしかない。

 いや、場所によってはランベルトやアルバン達にやらせてもいい。


「ひー様、実は話には続きがあります」

「ん? 何です?」


 私は村上ちゃんに促されたため、もう一度、篠田さんを見る。


「エルフの奴隷を見た町でリースさんらしき人を見ました」


 篠田さんがはっきりとリースの名前を口にした。


「リースを? 見間違えではなく?」

「はい。間違いないと思います。リースさんの顔は忘れることが出来ませんので……」


 まあ、リースは私とミサと一緒に体育館の壇上の上にいたからね。

 しかも、高笑いしてた。

 生徒達にとってはインパクトは強いだろう。


「なるほど、リースですか…………それはいつです?」

「3ヶ月前です」


 結構、前だな……


「町と言いましたね? 場所は?」

「中央神殿から西部にあるマナキスという町です」


 当たり前だが、知らね。


「ふむふむ…………お前達、少しの間、静かにしてなさい」


 私はこの場にいる皆にそう言うと、目を閉じる。


『ランベルト、応答しなさい』

『――ッ! これ、急に来るからびっくりするなー』


 東雲姉妹のご主人様のランベルトだ。


『慣れなさい。そんな事よりもお前に聞きたいことがあります』

『慣れるかな? いや、すまん。何だ?』

『マナキスという町を知っていますか? 中央神殿から西部にあるそうですが』

『知ってるぞ。キールの町と中央神殿の間にあるそこそこ大きい町だ』


 やはり知っていたか。

 中央貴族のこいつなら知っていると思った。


『キールからはどれくらい離れていますか?』

『馬車で3~5日くらいじゃないかな? すまんが、具体的な日数はわからん。時間をくれたら調べてみる』

『頼みます。また連絡しますので、早急に』

『了解』


 私はランベルトとの通話を切り、次にリースに繋ぐ。


『リース、聞こえますか?』

『……………………』


 また応答しない。


『お前はいつまで私を無視する気ですか?』

『……………………』

『お前はマナキスにいますね?』

『え!? なんで!?』


 バカめ。


『私に知らないことはありません』

『あの、その…………』


 リースが動揺している。


『まあいいです、お前はそこにいなさい。私が迎えにいってあげましょう』

『いえ、そんな必要はありません!』


 まだ拒否する気か……


『私はお前の意見など求めていません。バカ娘が』

『ひー様、私は……!』

『そんなに私達をこの世界に呼んだことを後悔しているのですか? それとも自分の正体ですか?』

『えっ!?』


 私は信者の状態を把握できるのだ。

 だからこいつの情報はほぼわかる。


『お前は女神教の巫女を破門になって、一族郎党ごと死罪になったそうですね?』

『なんでそれを!?』


 氷室に聞いた。


『破門のうえに死罪は重いですねー。普通はあり得ない…………お前が人族ならばね』

『なんで、なんで…………』

『女神アテナに何と言われました? 汚らわしいですか? 女神アテナは亜人が嫌いですからね…………お前がハーフエルフだと知った時はさぞ怒ったでしょう』


 私の信者リストによると、リースの種族はハーフエルフだ。

 こいつは人族とエルフの子。

 そりゃ、破門にもなるし、死罪だろう。


『や、やめて…………』

『もう一度言います。お前はそこにいなさい。もし、逃げたら一生首輪をつけて拘束し、監禁してあげましょう』


 リースは優秀ではあるのだが、暴走癖がある。

 学校を占拠したのもそうだし、あちこちでテロを計画もしていたと聞いている。

 こいつは一度、抑えた方が良さそうだ。


『え? それはそれで…………あ、いや、何でもないです』


 え?


『ん? んん?』


 こいつ、何て言った?


『はい?』


 ……………………………………。


『……そこで待ってなさい』


 私は耐え切れなくなって、リースとの通話を一方的に切った。

 そして、目を開ける。


「どうでした?」


 ミサが聞いてくる。


「ねえねえ、リースってもしかして、めっちゃヤバいヤツ?」


 私は皆に確認してみることにした。


「「「「知らなかったんですか?」」」」


 えー…………

 リースって、私のことが好きなんだろうなーとは思ってたけど、めっちゃ変態が入ってるじゃん。

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