マッドは王様から結婚したい人がいると要子の写真を見せられた時、すぐに感じました。
王様は祖母に似た女性を見つけたのだと。
マッドは子供の頃から王様の家に住んでいて、学校も全て王様の家が出してくれました。
大学を卒業し、自分の好きな道に進むように言われましたが、
幼い頃から子供同様に育ててくれた王様の家に恩返しがしたく、
執事になることにして、それ以来、ずっと誇りを持って王様の一族に仕えてきました。
特に王様は我が子のように可愛く、また王様の方でも、マッドに懐いていました。
王様の結婚は我が子の結婚のように嬉しく、
相手の要子に会うと、王様が要子を選んだ訳がよく解りました。
ただ単に祖母に似ているだけでなく、きっと心の繋がりが欲しかったに違いないと感じました。
要子様は一緒にいると心が和んでくるのです。
部屋の奥の天蓋付きのベッドに要子は、
「わぁー!!
これ、このベッド、お姫様のベッドみたい!!
すごい!」
と歓声を上げ、
「要子様は、王妃様ですからね、当然です。」
と答えると、首を傾げて不思議そうにしていまして。
チェスが得意というので、チェスもご用意致しましたと、
窓際の円形テーブルを指差すと、
飛ぶようにテーブルに走り、
こんなチェス見たことない、
これはきっと高級品ね!と。
マッドにすると、愛らしくてならなかったのです。
下の階にいる2人の側室は美人ではあっても、
マッドに対して使用人扱いしかせず、
喜ぶなど皆無で、毎日のように何かかにかと不足を言い付けてくるのですから。
感謝の言葉など聞いたことがありません。
マッドは王様は良い伴侶を得たと安心しました。
要子は物欲がない。
マッドはいち早く、要子のそこを見抜いてしまいました。
「この王国には、日本国籍の女性で、もう1人、
要子様のようにチェスの得意な方がいらっしゃいます。
王様はきっと、要子様にその方とも仲良くなられることを願ってらっしゃいます。
そのチェスセットは特注されたものです。」
要子はへえー?!と言ったきり、チェスを並べていじりだし。
これ、水晶かな? と。
要子はミスターマッドにいろいろ聞きたい事があるようです。
(つづく)