「この王国ですが、王様に国民登録している人達の一覧を見せて頂きましたが、
私のような人間でも名前だけは知っている有名人ばかりですね、
登録条件が厳しいのですか?」
「有名人でなくても良いのですが、
共益金がけっこうな金額ですから。
ある程度資金力が必要になりますね。」
「この王妃の間には誰でも自由に入ってこれるのですか?
鍵はかけられるのですか?」
「入ることが出来るのは、王様と王妃様、と、私です。
指紋登録してあります。
鍵は自動でかかります。」
「王様が生まれた時からご存知でしたね、ミスターマッド、
王様はどのような子供でしたか?」
「それはそれは可愛らしい、
誰からも愛される元気な男の子でございました。
明るくて、やんちゃで、いたずら好きで。
それが過ぎて、窓ガラスを割ったり、旦那様が大切になさっている壺を割ったり、よく叱られていました。
そんな時、王様の肩を持って王様の弁護をなさるのは、決まって旦那様のお母様でした。
その方が、要子様によく似てらっしゃる。
東洋の神秘的な黒い大きな眼が、特に似てらっしゃいます。」
「ミスターマッド、私は王様にとって、良いお嫁さんになれると思いますか?
正直に答えて下さい。
私は、側室さんたちに比べると子供過ぎて、自信がないのです。」
「そんなことを心配されてらっしゃったのですか!!?
要子様こそ、王様に最も相応しい王妃様、奥様、お嫁さんですよ。
私は自信を持って断言できます。
王様のご両親もきっと私と同じように思われるはずでございます。」 どんな質問にも即座に答えてくれるミスターマッドに、
要子は信頼感を持てた。
また、王様が言っていたように日本語は王様より、
丁寧で文法的にも正しい使い方が出来るようで、
若い帰国子女達に混じって1年間しっかりと日本語の勉強をしただけのことはあると感心した。
王様が大学に通い、ミスターマッドは執事としての仕事をしながら、
日本語の勉強、日本の歴史、日本美術について勉強したらしく、
とてもとても博識だった。
要子はミスターマッドが大好きになってしまった。
(つづく)