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ヒロイン達が「敗者は勝者のものになる」決闘を挑んでくるだけど!~ある成金お坊ちゃんに転生した男の勘違い悪役貴族ハーレム~
ヒロイン達が「敗者は勝者のものになる」決闘を挑んでくるだけど!~ある成金お坊ちゃんに転生した男の勘違い悪役貴族ハーレム~
だぶんぐる
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年05月24日
公開日
2.5万字
連載中
「クハハハハ! いいか! ファナ=ステラ! これは、『敗者は勝者のものになる』! そういう決闘だ! 分かっているな!」 「勿論よ! 貴方が勝ったら、私は貴方のものになる! そういう決闘でしょ!?」 「そうだ! いいんだな! 本当にいいんだな!」 「な、何度も言わせないでよ……ばか……!」 そう言って頬を染める金髪の美少女が剣を構える。隙だらけで。 何故だ! 何故こうなってしまった!? ゲーム『スターオブファンタジア』の中の適当ネーミング悪役貴族に転生してしまった男の悪役コメディ!

第1話 適当ネーミング悪役貴族に転生したんだけど!

「クハハハハ! いいか! ファナ=ステラ! これは、『敗者は勝者のものになる』! そういう決闘だ! 分かっているな!」

「勿論よ! 貴方が勝ったら、私は貴方のものになる! そういう決闘でしょ!?」

「そうだ! いいんだな! 本当にいいんだな!」

「な、何度も言わせないでよ……ばか……!」


 そう言って頬を染め金髪の美少女が剣を構える。隙だらけで。


 何故だ! 何故こうなってしまった!?


 俺様の今の名はスティーシ=ナリキーン。この『スターオブファンタジア』の世界における悪役貴族。何故自分のことを悪役貴族だと名乗るのか。理由は単純明快。俺はこの世界を知っているから。


 『前世の俺』は日本でゲームと筋トレが趣味の普通の会社員だった。だが、己の筋肉を過信した俺は暴走する車に轢かれそうになった子供を助け、ぶっとばされた。そりゃもう見事にぶっとばされたね。


 最近は暴走トラックよりも歩道に突っ込んでくる暴走車の方がリアルだよなあとか考えながら、遠くから聞こえてくる救急車のサイレンと近くで聞こえ続けてやがるスマホパシャパシャ音を葬送曲にして前世の俺は死んだ。



 そして、その前世の記憶を取り戻したのが6歳の頃。

 当時わがまま肥満クソガキの極みと化していた俺が暴れてベッドから落ちて頭を打った時だった。


「……ぶひい!? これ、スターオブファンタジアじゃねえか……!」


 俺様、スティーシ=ナリキーンは、前世の俺がやっていたゲーム『スターオブファンタジア』の世界における悪役貴族だったこともその時思い出し、絶望の淵に立たされた。


 なんといってもこのスターオブファンタジア、ゲーム会社が出したものでなく、個人制作のぶっちゃけクソゲー。


 パワーバランスは滅茶苦茶主人公がただ無双してきもちぃいい!

 その上、どんどん嫁が増えてきもちぃいいい!

 ちょっと叡智な展開もありきもち以下略……という単純明快なゲームでプレイ時間は3時間というもの。あまりにも薄っぺらすぎて一回やって飽きてやめた。


 いや、ごめん嘘だ。叡智な展開だけ何回かリロードした。


 特にストーリーがあるわけではなく、嫁候補に迫る悪役と主人公出会う、悪役がとにかく罵詈雑言から人質・捨て駒など悪役ムーブをこれでもかとかまし続け、一撃で倒されヒロインベタ惚れ主人公とイチャイチャ展開、というもので、正直キャラクターや世界情勢に関する情報が少なすぎる。


 この俺様が転生したスティーシ=ナリキーンに関しても、名前のひどさゆえに覚えていたが、捻りのないその名の通り、ただ金があるだけの捨て石成金キャラ。所謂序盤噛ませ犬。


 ちなみに噛ませ犬キャラで言えば、カマセィーヌ=パンツというヒロインのパンツを盗み脅迫する悪役もいた。主人公のチートなスピードで秒殺されるキャラ。とにかく上げればきりがないほど愛のないネーミングを付けられたただお前はもう死ぬ的な名前の悪役オンパレード。


 というわけで、俺様スティーシ―=ナリキーンは、捨て石成金として16歳になり学園に入る事になったら主人公と出会い、ぼっこぼこにされる予定になっている。


 だが、それは完全に作者と主人公の都合だ。


 作者は知らんが、主人公に関しては『女の子にそんなひどいことするなんて!』と『オレがこの学園の平和を守るんだ!』くらいしか言わず台詞に重みがない上に、シンプルにステータスがすごいという小学生みたいな恋愛観でモテていて好きになれなかった。


 なので、もう主人公の物語だかなんだか無視して生きていきたい。なんだったら殴りたい。いや、抹殺したい。道徳を知らない人間が書いたようなただただ「俺が守りたいから全部守る! 深い意味や信念はない!」的な善人なんて不快でしかない。


 もう存在が許せない。


 とはいえ、腐っても主人公。主人公補正でこの世界はご都合主義的に動いていく可能性はある。


「ならば俺様は俺様の道を行くのみ」


 俺様は鼻息荒く重たい身体を起こし決意を胸に立ち上がる。


 傍らではメイドが涙目でこちらを見ていた。多分、ベッドから俺様が勝手に落ちて怪我をしたとしても、自分のせいにされるのではという思いとここから離れれば責任を問われるのではという二重の恐怖で床に縛り付けられていたのだろう。


 今までの、前世の記憶のない俺様であれば何の罪もないメイドをしかりつけ、罰と称して尊厳を踏みにじるような真似をしていたに違いない。


 だが、そんな小悪党は今日で卒業だ。


「最強の悪役貴族に俺様はなるぅううう!」


 両手を高々と挙げ、そう全力ブヒボイスで宣言するとメイドがおもらしをしてしまい、結局尊厳を奪ってしまう事になった。正直すまんかった。


 ちなみに、そのおもらしメイドの名はメイ・ドエム。作者くんさあ。

 エーでもビーでもシーでもないエムだよ。13番目だよ?

 あまりにも可哀そうな名前のメイ・ドエムに俺様は出来るだけの小遣いをやった。


「スティーシ―さま……!」


 その時の俺様は全く予想していなかった。もらしたことによる大混乱とその後与えられた優しい言葉と大金により、メイ・ドエムはおかしくなってしまい、狂信的なスティーシ―信者となり、俺様に尽くし続け、主人公をゴミ扱いする最狂メイドとなることを。

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