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第29話:星杖の在り処

 パンツマン・オミトは賢者ベッキーの策士っぷりに脱帽していた。しかし、それでも聖女に会うのに別の方法が無かったのかと問いかけてみた。


「正式な手続きをしている時間なんてないわよ~。もたもたしてたら本物の聖女の杖が処分されちゃうでしょ~?」

「確かに……」


 聖女の星杖の所在がわからなくなってから、少なくとも3日は経過している。しかも、レプリカの星杖を持った聖女がパレードを行っている真っ最中だ。


 教会側もやきもきしていることだろう。次の行動に移る可能性が高い。


「それと聖女がパンツちゃんに会いたがってたのよね~。次に会いに来るときは必ずパンツちゃんも同行させてって言ってたの~」


 耳を疑った。聖女はどうやら自分にご執心のようだ。パンツの代わりにハンカチを贈ってくれた。


 顔を合わせたこともない男に対して、何故そのようなことをしたのか、未だにわかっていなかった。


「……嫌な予感がめっちゃするんだけど!?」

「パンツちゃんはモテモテだな~♪」

「モテモテなら、パンツの1枚くらい、俺にくれよ!」

「それはそれ。これはこれ~♪」

「ちくしょうちくしょう……」


 アリスはまたしても「あはは……」と苦笑していた。聖女もそうだが、アリスも自分にパンツを1枚も差し出していない。


 どれほど彼女たちのために働けば、彼女たちからパンツを進呈されるのだろうか。もしかすると骨までしゃぶられる気がしてしまう。


◆ ◆ ◆


 賢者ベッキーの提案通り、パンツマン・オミトたちは聖女のパンツを盗むために夜の王城に忍びこむことになった。


 こそこそと足音を立てないように王城の城門に近づく。門兵たちがこちらに気づいたが、何も見てませんとばかりに「ふわぁ~~~」と大あくびしている。


 そんな彼らの横をこそこそと忍び足ですり抜ける。「今、何か通ったような?」とか「風でパンツが飛んできただけだろ」と言いたい放題だった。


 出来レースにもほどがある。見た目妖しさマックスであるパンツマン・オミトをあっさりと見逃してくれた……。


 城内に入る。城内は静まり返っていた。ふかふかの絨毯を足で踏みながら、抜き足差し足忍び足と歩をゆっくり進めていく。


「あっ、こんばんわ~」

「はい、こんばんわ。聖女様の部屋はわかります?」

「は~い。大丈夫ですよ~」


 ばったりと使用人と出くわした。ベッキーが目の前の使用人とのんびり挨拶している……。あまりにも無警戒すぎる。


(この城、大丈夫なのか? こんなんだから、聖女の星杖を盗まれたんじゃねえのか?)


 もはやツッコミを入れる気にもなれなかった。順調すぎる。こちらは一応、泥棒っぽく、静かに移動している。


 こちらの動きに気付いている者が他にもいたが、何も見てませんとばかりに、あっちへと視線を逸らしていやがった……。


 パンツマン・オミトたちは王城の一室の前までやってくる。ベッキーが「ここよ~」と言ってくれた。無事に聖女の下へとたどり着いてしまった……。


「こんこん。夜分遅くすみません。パンツ泥棒で~す♪」

「お待ちしておりましたわ。どうぞ、中へ」


 ベッキーが丁寧にドアをノックする。部屋の中から女性の声が聞こえた。その声に誘われて、ドアを開いて部屋の中へと入る。


 なんとも清楚な部屋だった。高そうな調度品が並ぶ部屋だったが、そのどれもが自己主張が激しくない。


 聖女がこの部屋の華であり、調度品はその華を飾る花瓶のような役目を担っていた。


 その部屋の効果もあってか、パンツマン・オミトは聖女の姿にトゥンクと胸を高鳴らせた。すたすたと聖女の前へと進み出て、そこで片膝をつく。


 さらには聖女の手を取り、上目遣いで聖女に言葉を告げた。


「あなたのパンツを俺にください!」

「……えっと? 初対面の相手に言うことなのですかね?」

「もう一度、言わせてください。あなたのパンツを俺に食べさせてください!」

「……えっと? 大事なことなので二度言いました!?」

「大事なことなので! 痛ーーー!」


 アリスが靴を片方脱いで、その靴底で思い切りこちらの頭を叩いてきやがった。パッコーンという気持ちの良い音が部屋に響き渡ることになった……。


「メアリー。すみません……オミトさんはパンツを食べないと死んじゃう悲しきモンスター・パンツマンなので」

「……はぁ。噂以上の殿方ですわね。うっうん! パンツの件はスルーさせていただきますわね」

「そんなあ!? 俺、パンツを食べないと死んじゃうのぉぉぉ!」

「メアリー。無視してくださいね?(にっこり)」

「慣れてるわね、アリス……」

「いつもこうなんで(にっこり)」


 パンツマン・オミトの要望はあっさりと却下された。それよりも、聖女の星杖の在り処を探らなければならない。


 ここにやってきた目的は聖女からパンツをもらうことではない!


 名目上、聖女のパンツを盗みにきたのだが、本来はそれが目的では無いのだ!(グギギ!)


「では、メアリー。力を貸していただけますか?」

「わかったわ、アリス。聖剣をこちらに向けて?」


 勇者アリスと聖女メアリーが力を合わせる。聖剣の刃とレプリカの星杖を合わせる。そこから光が飛び出した。光が部屋の窓に当たる。まるでこの窓を開けてほしいと言いたげだった。


 ルナが急いで窓を開ける。自由を得た光が王都のとある一角へと飛んでいく。


「すげえな……これが聖女と勇者の力ってことぉ!?」

「正確に言えば、勇者の聖剣と聖女の星杖の力ですわね」

「じゃあ……勇者のパンツと聖女のパンツの力が合わさるとどうなるんだ!?」

「……貴方、ずっとパンツパンツばっかりですわね?」

「……俺、パンツマンだから」

「……おほほ。そうでしたわ、悲しきモンスター・パンツマンでしたわね」


 なにはともあれ、この光を追えば、本物の星杖がある場所に辿りつけるだろう。パンツマン・オミトは窓の縁に立つ。そこから下を見下ろせば、怖気を感じる高さがあった。


 しかし、勇気を振り絞り、窓の縁から外へと勢いよく飛び出す。


「パンツ・ウイング!」


 パンツマン・オミトの背中から多数のパンツが生える。それが翼の形となる。パンツマン・オミトはその翼を用いて、ゆっくりと夜の王都の上空を滑空していく。


 光に導かれ、パンツマン・オミトはその場所へと向かった。目下にはごろつきたちがいた。上空から一気に下降する。


「な、なんだ!? 空からパンツ一丁の男がーーー!」

「親方!? どうしやすか!?」

「ええい! 慌てるな! 締め上げろ!」


 ごろつきたちがこちらをすっかりと囲んでしまった。パンツマン・オミトはパンツで出来た翼を体内に引っ込める。


 べきぼきばきぼきと手の指を鳴らす。それを合図にごろつきたちが一斉に襲いかかってきた。


 しかし、パンツマン・オミトは一切ひるまなかった。手に持っているパンツを小刀のように振るう。


 鋭利なパンツでごろつきたちを次々と斬ってやった。


「ふっ……パンツみね打ちだ!」

「おぼえてやがれ、こんちくしょう!」

「おかーーーちゃーーーん!」

「うへえ。こんな仕事、引き受けなきゃよかったぜーーー!」


 身体のあちこちから血を流しながら、チンピラたちは逃げて行った。奴らを追う必要はない。こちらはチンピラの命が欲しいわけではなかったからだ。


 返り血のついたパンツを虚空の向こう側に仕舞う。そうした後、建物に入り、聖女の星杖を探す。建物の一角に光を放つ箱があった。その箱の中に星杖があるのだろう。


 その箱に手をかける。「よいしょっ」と言いながら、その箱の蓋を無理矢理、剥ぎ取る。


「……遅かったってやつなのかなあ!?」


 すでに聖女の杖はぽっきりと半分に折られていた……。折れた星杖を手に持つ。どうしたものかと思っていると、アリスたちが遅れてこの場にやってきた。


「オミトさん!?」

「俺じゃねえよ!? すでに折られてたんだよ!? 本当だよ!?」

「いえ……ひとりで向かっていったから。無事でよかった……って意味ですよ?」

「あっ……そういうこと」

「てか、やましい気持ちがあったから、言い訳したんです?」

「ちがーーーう! 俺が折ったわけじゃない! 信じてくれーーー!」


 アリスがジト目でこちらを睨んできた。しかし、自分とアリスの間にルナが割り込んでくれた。


「アリス殿。パンツマン殿はパンツ以外のことで嘘は言わないと思うぞ!」

「……完全に否定できない俺がいるーーー!」


 ルナがこちらの肩をもってくれた。信じるべきは21歳JDのルナなのかもしれない。


 アリスが腰に佩いた鞘から聖剣を抜く。すると聖剣が輝く。ベッキーの手にはレプリカの星杖があった。そのレプリカの星杖と折れた本物の星杖が自然と宙に浮く。


 驚きの顔になってしまった。そうしている間にもレプリカと本物の星杖が光に包まれ、その光の中で混ざり合う。十数秒後には聖女の杖は修復された……。


「勇者の聖剣、すごすぎない!?」

「私がすごすぎるんです(えっへん!)」

「……勇者の聖剣、すごすぎない!?」

「……オミトさん。ぶっ飛ばしますよ?」


 先ほど、アリスに疑われたので、そのお返しをしてやろうとしただけだ。怒っているアリスに「どうどう……」と言って宥める。


 落ち着きを取り戻したアリスが宙に浮かぶ星杖を手に取る。それをベッキーに手渡そうとした。


 しかし、パンツ・イヤー(地獄耳)が、こちらに向かってくる足音を捉えた。


「まずいぞ、アリス! 10人くらいの足音をこの耳でキャッチした! あいつら、こっちに向かってくる!」

「え!? オミトさんの耳って、すごいですね!? 本当に性犯罪に使ってませんよね!?」

「パンツに誓ってもいいよ!? マジでそんなことにこのパンツ・イヤーを使ってないから!」


 やっとのことでアリスたちは本物の聖女の星杖を取り戻した。しかし、それを許さないとばかりに黒ずくめの集団がこちらを取り囲んできた……。


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