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このたび、仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました
このたび、仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました
夜月 純夢
異世界恋愛ロマファン
2025年05月25日
公開日
3.7万字
連載中
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?

第1話 王女誕生

「ほやぁ。ほやぁ」


 寒い冬の日の朝、シュレンタットの王宮に、可愛い赤ちゃんの泣き声が響き渡った。


「国王陛下! 姫です! 姫がお生まれになりました!」


 王妃の側に仕える侍女が、急いで国王に声をかける。

 二人目の子どもの誕生を今か今かと別室で待ちわびていた国王バルタザール・シュレンドルフは、慌てて王妃と生まれたばかりの娘が横になる寝台へと、駆け寄って行った。


「この髪の色は、このように白く見えるほどの金髪は、強大な魔力の持ち主かもしれん。でかした! この子はきっと、我が国に幸福をもたらしてくれるはずだ!」


 生まれたばかりの姫を一目見てそう言うと、国王は横になったままの王妃の手を握り「よくやった、よくやった」と繰り返し呟いた。


 髪の毛の色が薄ければ薄いほど、魔力が強くなるシュレンタットにおいて、誕生したばかりの姫の髪の色は奇跡としか言いようがない。

 二年前に生まれた王子も、王妃も、そして国王自身も綺麗な金髪だけど、その三人とは比べられないぐらいの色。

 白にも近いほどの金の色を持つ姫に、国王一家が、いやシュレンタット全体が期待を寄せる。魔力が少ない者が増えているこの国の救世主になると、必ず幸福を与えてくれると、誰もがそれを望んだ。


 たった一人、幸せそうな顔をして眠る本人だけが、そんな期待に応える気も応えられる気もしていなかった。

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