足繁く通った甲斐があり‥‥‥彼女と話す事が出来るようになった。
ただ、本名だけは教えることが出来なかった。
「伊集院」って苗字はそんなにある苗字ではない。
伊集院=伊集院コーポレーションになる人が多い。
伊集院コーポレーションの関係者だと知ると‥‥‥彼女が離れていきそうで‥‥‥名前を聞かれた時に咄嗟に実の母の旧姓を名乗ってしまった。伊集院の名前で寄ってくる女はたくさんいる。だけど、なぜか直感で彼女は離れていくと思った。なぜかは本当に説明ができない。
騙してる罪悪感はある。いつか本名を名乗れるぐらいわかり合いたいと思っている。
いつもは会議後の癒しを求めて行くが今日は会議の前に気合を入れるために行った。
挨拶を交わして他愛ない話をして注文する。
コーヒーを持ってきてくれる時にもう一度話せると思っていたのに、彼女は接客をしており別のスタッフが持って来てくれた。
「紗英ちゃんじゃなくてゴメンナサイ。紗英ちゃんも残念がってます。」っとスタッフが微笑む。たぶん‥‥‥オーナーだろうな‥‥‥。残念がってくれたら嬉しいが‥‥‥。
あっちの客とも会話は弾んでいるな‥‥‥。嫉妬心の
ようなものが湧き出てくる。あの男‥‥‥どっかで見たことがあるなんー。
どこやったかな?誰や?どっかの会社の式典かパーティーであったのか?思い出せそうで思い出せなかった。会計をする時に‥‥‥デートに誘った。行きたくない、困るカンジではなかったがオーナーに聞いてから返事をくれる事になり‥‥‥真面目なところも良い。店を出てからもあの男の事が気になり頭から離れなかった。誰だ?なんか胸騒ぎがする。