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24

 こうして二人で怪我人の救護にあたっていると、望一人でやっていた時よりもスムーズに怪我人は減っていったのだ。


 その時、望のコートの内ポケットに入っている携帯が震え出し、電話がかかっていることを知らせてきたようで、


「和也! 俺のコートの内側に入ってる携帯を取ってくれねぇか? 多分、病院からだと思うからさ。 それで、もし、それが病院からだったら、今、和也と俺は現場に居て救護にあたっているっていう事を伝えといてくれねぇか?」

「あ、ああ!」


 和也は望にそう言われて頷くと、さっき望が言っていたポケットから携帯を取り出し、その電話へと出るのだ。 そしてその電話の相手は望の予想した通りに病院からで、和也は望に言われた事を伝言しておく。


「なら、現場で怪我人の手当てをしておいてくれってさ」

「ああ、そうか……ありがとうな」


 望は和也から携帯を受け取ると、その携帯を再び内ポケットの中に入れ、再び和也と一緒に怪我人の救護にあたる。


 その間にも雄介達消防隊の方も鎮火に向けて必死に放水を続けてくれているようだ。


 そして数時間後。


 雄介達のおかげで火の方は鎮火し、望達の方もとりあえず怪我人をみんな救急車で病院の方に搬送をし終えていた。


 それと同時にそこにいた人達が安堵のため息を漏らす。


 ビルの方も鎮火し、消防隊員達がホース等の後片付けをしている中、雄介は望達の存在に気付いたのか、望の姿を見つけて走ってくると、


「先生達も来てくれてたんか?」

「あ、ああ、まぁな……さっき、桜井さんと会った後に買物に行こうとしてたんだけど、その後にあの爆発音を聞いて、俺だって、黙って見てらんなかっただけだよ。 だから、現場まで走って来たんだけどさ。 あ、とりあえず、怪我人の方は大丈夫だ。 病院の方に搬送しておいたからさ……そっちの方も終わったようだな」


 望は今までしゃがんでいたものの、雄介が来ると同時に立ち上がり、そして視線を向けると、雄介に向かって笑顔を向けるのだ。


 フッと望が見上げた視線の先に見えて来た雄介。 やはり火災現場に入っていたからなのか、顔は煤で汚れていた。 雄介の方も鎮火出来て安心しているのか笑顔を向けているのだが、心なしか何処か痛めているのか顔を歪めている姿が望の瞳に入って来ているようで、そこに首を傾げる。


 だが次の瞬間には、望は直ぐに目を細めて雄介の事を見上げていた。


「ああ、まぁな……俺等に任せておいてくれたら、こんくらいは大丈夫やで」

「そうか……」


 そうは答えるもののやはり雄介の事が気になってしまったようだ。


 今度、望は笑顔から真剣な表情に変えると、


「お前、ちょっと、ここに座れ!」


 と急に何かあったかのように雄介に向かって命令口調で言うのだ。


「はぁ!?  何を言うとるん? 俺等の方はまだ片付けとかがあって休憩なんてしとる暇なんてないんやぞ」

「いいからっ!」

「へいへい、分かりましたよ。 吉良先生……」

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