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25

 雄介は望の命令口調にも押され、仕方なく目の前にある階段の端っこへと腰を下ろす。


 すると望は雄介の前に座り込み、徐に雄介の左足を持ち上げて履いていた長靴を脱がせ、そのまま足首を回し始める。


「あ! あぁ! ちょ、ちょい待った!!」


 いきなり回された足首に悲痛な声を上げる。そんな雄介の様子に和也が目を丸くしていた。


「ここが痛いんだろ?」


 そう言う風に雄介に言う望にどうやら納得してしまったようだ。一人頷いてしまっていたのだから。


「あ、ああ、ちょっとな……ぁ……ぃ……」

「やっぱりな、そんな事だろうと思ったぜ。 とりあえず、お前も治療しないとな」

「流石やね。 さっきまではそないに痛くなかったんやけど、鎮火してこう安心したら……痛くなってきたって感じだったわぁ。 どないして、俺が怪我しとるって分かったん?」

「お前さぁ、俺の所に来る時に、笑顔ではあったんだけど、なんか気持ち顔が痛みかなんかで歪んだような気がしたしな。 それに、気持ち足を引きずって歩いているようにも見えてたからな」

「なんや、そうやったんか。 やっぱ、そこはお医者さんって感じやんな」

「あ、ああ……まぁ、そこはな。 まぁ、この位なら二、三日湿布でも貼ってれば治るもんだけどさ……ほら、だって、捻挫位だし」


 望はそう言いながらさっきまで怒っていたのが嘘みたいに優しく治療をしていく。


「とりあえず、これでオッケー! まだ、これから色々あるんだろ?」

「ああ、まぁ、処理とか報告書とかも出さなきゃやしな」


 雄介はそう望に返すと直ぐに消防隊員がいる所に戻って行ってしまう。


 そこに望はひと息吐くと今度は和也の方に顔を向け直し、


「まぁ、とりあえず、落ち着いたみたいで良かったな。 和也、今日は本当にありがとうな。 あのさ、良かったらでいいんだけど……その、また病院内ではコンビ組んでくれないかな? 今、コンビ組んでる奴がな、その……和也と違って使えねぇんだよ。 そいつにもうイライラしちゃって。 だから、今まで一緒にやってきた和也の方がいいって思ったんだけど?」


 そう流石にそこは照れ臭そうに言う望。


「そっか……だよな。俺の方も実はそう思っていた所だったんだよな。こう今コンビ組んでる医者が俺の言葉は一切聞き入れてくれなくて、俺の方もイライラしてた所だったんだよ。 俺の方も望じゃなきゃダメだって分かったんだよ」

「そっか……じゃあ、もう、上に言っておくな」

「ああ、お願いな」


 望は色々な意味で和也と話ができて安心したのか、それと事故の方も片付いて安心することができたのか、その場で思いっきり伸びをする。


 そこで望は和也に聞きたいことがあったのか気になったことを問ってみた。


「……って、何で、お前もここにいるんだ?」

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