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57ー友情ー終了

 和也はその男に向かってにっこりと微笑むと、その男性は和也に心を開いたのか、それとも和也に掴まれ逃げられないと思ったのか、口を開くのだ。


「……本当ですか?」


 その男性は俯けていた顔を上げ、二人を見つめると、望も和也も同時に頷く。


 そして和也は雄介の病室のドアを開け、その男に病室に入るように促す。すると雄介は人が入ってきた気配に気付いたのか、ベッドに半身を起こすと、その人物の方に視線を向けた瞬間、声を上げる。


「え? さ、坂本かぁ!? ホンマに坂本なんか!?」


 雄介は坂本の姿を目にするとベッドから降りて坂本の元へと向かい、


「良かったわぁ、釈放されたって事やんね! 今回の事はお前は絶対に悪くない! 俺のミスやし、それに坂本が変わってしまったんは俺のせいでもあるしな。そういう所に行くのは俺もって事やしなぁ」

「本当に今回の事件について、桜井は俺の事許してくれるのか?」

「ああ、勿論や! それにホンマ俺が悪かったんだし、まぁ、とりあえず、会えて良かったわぁ」


 雄介は坂本の事を抱き締める。流石の雄介もそこは友人として坂本の事を抱き締めているのであろう。


 その二人の再会を和也達は見ているのはいいのだが、和也と望はこの病室に仕事をしに来たのだから、


「あのー……スイマセン……お二人が再会出来て嬉しいのは分かるのですが……俺達の存在忘れてませんか? 俺達は仕事でこの部屋に、来たんですけど……?」


 その和也の言葉に雄介はちゃんと聞いていたのか、和也の言葉に、


「あ、あぁ! それな! 俺の方はもうめっちゃ元気やし! 後回しにしてくれへんかな? それに今は坂本と話したいしな」

「そっか……んじゃあ、後でな」


 和也は雄介のその言葉に仕方なさそうな息を吐くと、望と一緒に雄介の病室を出て行く。


「ま、これで、解決だよな」

「ああ……」


 これからも望と和也、雄介と坂本の友情は続くのであろう。


 そしてやっとの事で望と雄介も恋人同士になれて、これからゆっくりとではあるのだが、愛情をも育んでいくのであろう。


 友情の中にも、愛情の中にも、仲がいいからこそ言い合いが必要な時だってある。逆に仲がいいからこそ言い合いが必要という事にもなるのかもしれない。


 これから先そんな仲でも喧嘩や擦れ違い等が起きた時、そのまま別れるのは簡単な事なのかもしれないのだが、そこで思い止まって話し合う事も必要な事なのかもしれない。


 人間というのは人生の中で試練に向き合いながら成長していくものだ。


 きっとこのカップルもそんな試練に向き合いながら、これから先、成長していくという事なのであろう。


『友情』 END


NEXT→ 『記憶』

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