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ー記憶ー10

 せっかく望とは久しぶりに会えた筈なのに、望からそんな冷たい言葉に雄介の方は離れて行ってしまう。きっと雄介の素直な性格がそうしてしまったのであろう。


「分かったわぁ……」


 雄介は今にも消え入りそうな声で答えると、さっき望に言われた通りにお風呂場へと行ってしまう。


 急にお風呂場へと行ってしまったであろう雄介に望は慌てたように声を掛け、


「あ! 風呂場は出て左だからなっ!」


 そう望は何事もなかったかのように雄介向かって言ったのだが、雄介からは返事はなかった。望からしてみたらさっきの言葉はある意味何も考えずに雄介に言ってしまった言葉であり、きっと雄介のことを傷付ける言葉だったということにも気づいていないのであろう。望はそこに首を傾げながらも買って来ていた荷物を冷蔵庫や冷凍庫へとしまうのだ。


 望はとりあえず買って来た商品をしまうと軽く息を吐き、ソファへと腰を下ろすと雄介がお風呂から上がって来るのをテレビでも見ながら待っていた。


 だが望が暫くテレビを見ていても雄介がお風呂から上がって来る気配がない。


 確かに望は先程、雄介に『シャワー浴びて来いよ』とは言った筈なのだが、未だに雄介が出てくる気配はない。シャワーだけなら少なくとも十分から十五分位で出てこれるだろう。それに雄介の場合短髪でもあるのだからもっと早いのかもしれないのだが、もうかれこれ一時間は出てきていないような気がする。


 だからと言って付き合い始めたばかりの二人にとって様子を見に行くのには結構勇気がいる事だ。

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