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ー記憶ー27

 雄介の1Kの部屋は荷物が少なく、ベッドとテレビ、それに小さなテーブルぐらいしかないせいか、広く感じられた。


 雄介は和也をテーブルに案内し、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。


「ビールでええか?」

「今は酒はいらないよ……俺、車だから」

「ああ、そっか……。なら、麦茶でええか?」


 雄介は自分には缶ビールを持ってきて、和也には麦茶を用意し、それをテーブルに運んできた。


 雄介はテーブルに座り、缶ビールのプルタブを開けて一口飲みながら、


「ほんで、話ってなんなん?」

「あ、ああ……そうだったな。お前さ、この前、望と言い争ったじゃないか?」

「え? あ、ああ……あれは言い争いじゃないやろ? ただ単に望が俺のこと嫌いになったんやし、ほんで、俺はただ単にそう思ったから帰って来たってだけやしなぁ」

「じゃあ、なんでお前は望が自分のこと嫌いになったって思ったんだ?」


 和也は真剣な表情で雄介を見つめる。


「そりゃ、あん時、望のことを抱きしめたのに、望は俺のことを拒否したからに決まっておるやろっ!」


 雄介は片手に持っていたビール缶を机に叩きつけるように置き、なぜか和也を睨みつけていた。


 しかし、和也は雄介の態度に動じることなく、


「そうか……たったそれだけの理由だったんだな」


 和也は雄介の言葉に何故か余裕そうな笑みを浮かべ、クスクスとしているだけだった。

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