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ー記憶ー77

 やはり雄介の部屋は一部屋しかないようだ。


 望はその部屋に通される。


「ほな、そこで待っといてー、今、着替えてくるし」

「ああ」


 望は雄介の言葉にそう答えると、真ん中にあるテーブルへ座らせ、麦茶を出してタンスの中から洋服を選び始める雄介。


 数分後、雄介は着替えが済んだのか、


「ほな! 行こうか!」

「ああ」


 そう言われて望が見上げた先には雄介の普段着姿だ。


 望だって雄介の普段着姿を見たことがない。今日、初めてプライベートで出かけることになり、これで雄介の普段着姿も見られたということだろう。


 雄介だって普段着は望の格好に似た感じでGパンにTシャツと本当にラフな格好をしている。


 しかし、雄介の場合にはその格好さえ似合ってしまっていた。


 本当にただ単にジーパンにTシャツ姿っていうだけなのに、なんでこんなにもカッコよく見えてしまうのであろうか。そこはやはり色眼鏡で見てしまっているからなのであろうか。そこは定かではないのだが、望はその雄介の姿に見惚れていると、


「何、ボッーとしとんねん! ほな、行くで!」

「あ、ああ……そうだったな」


 しっかりと雄介のことを見てしまっていた望。急に雄介に声をかけられ我に帰ったのか、雄介の後を追うと部屋を出る。


「駐車場は?」

「ここのマンションの裏手や。まぁ、表から来ると見えへん所にあるしな」

「そうだったのか」


 二人はエレベーターに乗ると、階下に降りて駐車場に向かうのだ。


「えーと、俺の車はどれやったかな?」

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