「アレって、お前の署の消防車じゃねぇのか?」
消防車というのは車体の上部に各地域の頭文字と数字が書いてあるのだから、望でも直ぐに春坂市の消防車だっていう事が分かったのであろう。
「ああ、まぁ……知っとるよ。さっき、仲間が言っておったしな」
「ほらよ……」
「ん? 何? 前……ん……? 見えへんやん……」
「俺がさっき救急隊員に掛けてもらった毛布だよ。それを頭から被らせておけば、お前だってバレねぇだろ?」
「まぁ……せやな」
雄介は望にその毛布を被らせてもらうと望と手を繋ぎ下へと降りて行く。
そんな中、さっきまで死にそうになっていた望が平気そうな様子にホッとしているようだ。
やっぱり坂本の時とは違うのだ。と思った瞬間なのかもしれない。坂本親子の時には本当に何も出来なくて悔しい思いをしたのだが、今回は違った。そうだ、色々な事が重なったのだから望が何とか助かって良かったという事だ。
下まで向かうと、これだけの火事だけあってか報道陣の方も沢山来ていた。だが望はその報道陣を上手く交わし雄介の腕を引っ張って、どうにか人気のない場所へと向かうのだ。
「はぁー、俺もある意味、助かったわぁ」
「……だな」
そう雄介に向かって微笑む望。