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ー記憶ー90

 本当に助かって良かったと思う雄介。でなければ今頃、この望の笑顔が見れなかったのだから。


「あ! せやせや! とりあえず、まずは洋服屋に行かんとなぁ。何処行くー? デートの続きしたいんやろ?」


 そう雄介の方はふざけて言うが、


「服屋に行ったら……とりあえず、お前の車取りに行かないとダメだろ?」

「あぁ! 完全に忘れておったわぁ! へ? でも、また、あの場所に戻らないといけないんか?」

「とりあえず、人気がなくなってからでいいし、それに、まだ、時間があるんだし、そんなに慌てる事はねぇだろ?」

「せやな! ほな、行こうか! ……ん」


 雄介が歩き出そうと思った直後、唇に温かいものを感じたようだ。


「……望?」

「……とりあえず、お礼……のキス」


 そう望は顔を俯け、恥ずかしそうに答えると、先に歩き始めるのだ。


「あ……ぅん……そういうこっちゃな」


 そう呟いた後、雄介の方も望の手首を取り、自分の方へと引き寄せると、唇を重ねる。


「ホンマ……望が無事で良かったわぁ。望が無事やなかったら、今頃こないな事出来へんかったしな」


 雄介はそう望に微笑みながら言うのだ。


「俺は……そのな……お前が絶対に助けてくれるって……思っていたからな」

「安心しとったのか?」

「ああ」


 雄介は望の体を後ろから、望の存在を確かめるかのように抱き締める。


「ホンマに良かったわぁ、無事やったみたいでなぁ」

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