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ー記憶ー92

「ん? あ……大丈夫だ。ちょっと頭がクラクラするだけだしな」


 実際、望はベンチに座っている最中でも、体調が急激に悪くなってきている様子だった。


「ちょ、水分買ってくるし、待っててくれ……」


 雄介はそう言って周囲を見渡し、自動販売機があるか探し始めた。大通りを挟んで向こう側に、ひときわ目立つ自動販売機を発見する。


 望をベンチに座らせ、雄介は横断歩道を渡り、自動販売機でスポーツドリンクを購入する。しかし、戻る途中で望が座ったベンチ周辺になぜか人だかりができているのに気が付く。


「……へ? 何!? 何が起こってるん?」


 状況を理解しようとするも、雄介の身長では見えない。横断歩道を渡らなければ望がいる場所に戻れない。


 急に雄介の頭には何かが警告しているような感覚が広がってくる。変わらない信号。車が行き交う大通りで信号が変わる気配はない。


 向こう側では何が起きているのか。車や人々の動きがあり、雄介には全く理解できない状況が広がっている。


 謎めいた状況に、雄介の心臓の鼓動が激しくなっていく。

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