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ー記憶ー112

 それから二人の間での会話は盛り上がり楽しい時間というのは、あっという間に過ぎるものだ。早くも面会時間が終わりを告げる音が病室内へと響き渡ってしまったようだ。


 帰る支度をすると、望の病室を後にする雄介。


 今日は久しぶりに望と話ができて良かった気がする。望が記憶を失くしてからは、まともに話ができていなかったが、今日は今の今まで話すことが出来たのだから。そして雄介にとって嬉しかったことは久しぶりに望の笑顔が見れたということなのかもしれない。



 それから数日後。


 望の方は何もなかったおかげで病院の方は退院することができた。望は自分の家に雄介と和也と連れて行かれ、雄介の車で望の家へと向かうのだ。


 雄介は望の家まで車で向かい、毎日望がやってきたことを雄介がやり始める。


 そう、車から一旦降りて家にある門を開けて、再び車へと戻ってくるという作業だ。


 前まで望がやっていたことだったが、今日は雄介がやるしかないからだったのかもしれない。


 きっと望のことだから、こういう記憶もないと思ったからだ。


 雄介はここが望の家だと説明するのだ。雄介からしてみれば、そこは完全に他人の家を説明するのは変な感じがしているかもしれないが、当の本人は今記憶がないのだから、とりあえずそうするしかないだろう。


「ここが望の家なんやで……」

「そっか……広い家なんだなぁ」


 ここにどれだけの土地があるのかは分からないが、望の家は近所にある一軒家に比べると遥かに広い。


 家の広さは本当に他の家の四戸分程。庭の方は普通の家の二戸分はありそうな広さだ。それに庭の方にはガレージもあり、三台位入れられるようになっていてシャッターも付いている。そして家の周りには木々が気持ち的にあって、望の家というのはその木々に完全に囲まれている状態でもあった。

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