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ー記憶ー114

 家の中に入ると、雄介と和也は望に家を案内する。


 しかし、彼らが知っているのは一階の部屋のみで、リビング、キッチン、トイレ、バスルーム、そして客室の位置しか案内することができなかった。


 たぶん、雄介だけが二階にある望の部屋を案内できるだろう。


 とりあえず、主に使用される部屋はこれだけだから、問題ないだろう。


「もう、望は疲れてるだろ? 自分の部屋に行って休んだらどうだ? そこは、まぁ、雄介が案内するしかないだろうなぁ。 望の部屋を知っているのは雄介だけだからな」

「あ! ああ……そうやんなぁ」


 和也に言われて、雄介は望のことを二階にある部屋に案内する。


 雄介は望をベッドに寝かせて部屋を出ようとしたが、


「ちょっと……待ってよ……」


 望に声をかけられて、雄介は足を止める。


「ん? 何?」

「お前、本当は俺の従兄弟じゃねぇんだろ? 普通、従兄弟同士だったら、ここまでしないんじゃねぇのかな? ま、せいぜい、ここまで優しくしてくれるのは親か恋人ぐらいなんじゃねぇのかな?」


 望の言葉に、雄介は身動きが取れなくなる。


 もしかしたら、これまでの雄介の行動が逆に余計なことだったのかもしれない。確かに、望の言う通り、親戚同士の関係では、ここまで世話を焼いてくれる人はそう多くはないだろう。


 そして、雄介は休みの日にも望の病院に通い、パジャマや身の回りの物を買っていた。望の世話もしていた。


 そう考えると、望の指摘は確かにもっともだった。従兄弟同士の関係では、ここまで世話を焼くことはないだろう。しかし、日常生活や常識的なことに関しては問題ないように思えた。

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