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ー記憶ー115

 雄介は自分の行動が望に対して、従兄弟以上の世話をしてしまっていたことに気付いた。


 彼が望に近づきたいという思いが強すぎて、結果的に従兄弟という答えにたどり着いたのだろう。しかし、雄介の行動は望が指摘した通り、親か恋人と同じような世話の焼き方だったように思える。


 それが今回、完全に裏目に出てしまった。


 雄介はまだ望との関係を従兄弟だと主張し続けるが、望の指摘に戸惑いを覚える。


「ま、まぁ……とりあえず、俺の方は望と従兄弟だし……」


 雄介は足早に望の部屋を出て行く。やはり、望に指摘されてしまい、気まずくなったのだろう。


 そして部屋を出た瞬間、雄介は大きなため息をつく。


 いつまで雄介は望との関係を従兄弟同士としていなければならないのだろうか。雄介は望に自分たちが恋人関係であることを伝えたいと思っているかもしれない。しかし、今の望は記憶のない望だ。


 だから、雄介は望に男の恋人がいたなんて言えないし、ただ望の側にいることしかできないのだろう。雄介の方は早く望に自分たちは恋人関係だということを伝えたいと思っているかもしれないが、今の雄介と望の関係は従兄弟であり、それさえも叶うわけがない。


 雄介が下に向かう頃には和也が夕食の準備を始めていた。


「どうだった……望の様子?」

「いつもの望と変わらへんかったよ!」


 雄介は笑顔で答えるが、和也から見れば、今の雄介は空元気のように見える。


「じゃあ、俺も料理の準備するな……!」

「おう! サンキュー!」


 そんな雄介の様子に気づいた和也だが、雄介の好意に甘えて一緒に料理をする二人。


 こういうことも、この二人の間には今までなかったことだ。

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