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ー記憶ー116

 いつの間にか変に仲良くなった和也と雄介は、何故か呼吸までもが合っている。片方が火の担当をしていると、もう片方は切る担当へと回り、夕食のおかずを作り上げていく。


「よっしゃ! 出来たな!」


 と和也が叫ぶ。


「おう! ほら、望に渡して来いよ。あー、でも、望に早く家に慣れてもらった方がいいかぁー。じゃ、あれだなぁ、望をここに呼んで皆で食べようぜ」

「せやな。ほな、俺、望んこと呼んで来るわぁ」


 と雄介が返す。


「ああ、よろしく」


 そう言うと雄介は二階にある望の部屋に向かい、ノックをすると部屋の中へと入る。


「入んでー、皆と下で食事せぇへんか?」


 と雄介は満面の笑顔で再び望の部屋へと入るが、部屋に入って声を少し震わせる。


「の、望? そ、それ何見てるん?」

「ん?  ああ! これか? 自分の携帯。さっきさぁ、さっき着てた服のポケットに入ってたんだよ。それで見てたらさ、あることに気付いちまったんだよなぁ。そう、俺とお前は従兄弟同士ではないことにな!」

「はぁ!?」


 望の言葉に、雄介は混乱する。少なくとも、雄介が口を滑らせて従兄弟同士ではないと言ってはいないはずだ。


 よくよく望の方を見てみると、望はあの日スプリンクラーで水没してしまい、データが全部吹っ飛んだと思われていた携帯を開いていた。


「証拠、見せてやろうか?」


 と望は自分の携帯を雄介に投げ渡す。

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