それを思わず口にしてしまった雄介。
その声がどれほど大きかったのだろうか。周囲にいる同僚たちが一斉に雄介の方を見つめてきた。
「……へ?」
雄介は今まで顔を伏せていたが、その視線で顔を上げる。
「どうしたんだ桜井? そんな大声を出して」
そう、雄介は親友である坂本に声をかけられた。
「あ、ああ! な、何でもないし! 気にせんといて、こっちの話やからなぁ……」
雄介は言ったが、坂本はなにかを察したようで、
「……もしかして、掲示板のことか?」
そのさりげない言葉に雄介は目を見開く。だが、坂本には嘘をつきたくはなかったのか、素直に、
「まぁな……」
と答えることにした。そしてため息をつく。
「仕方ないさ……」
「ああ、そこは、分かっとる……でも、ああ! 何でもないわ」
雄介はそこまで言うと、言葉を止めて顔をうつむかせた。
「おい……そろそろ、訓練の時間だぞ」
「ああ、おう……そうやったな」
午前中はデスクワークが中心だが、午後からは訓練がある。
訓練だって大事な仕事だ。デスクワークをきっちり終わらせると、雄介は着替えて外に出る。
今の季節、長袖の防護服では結構暑い。だが、自分の命を守るためには仕方がないことだ。
「ホンマ、暑いわぁ」
外に出ると、太陽が容赦なく照りつけ、本当に暑い。
まずは道具などの点検から。点検を終えると、この暑い中での訓練が始まる。いや、現場では火事などが多いのだから、もっともっと防護服の中が暑くなるのだ。だから、まだまだ外での訓練は、雄介たちにとっては涼しいほうかもしれない。