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ー天災ー26

 望は最後に棘のある言葉を残すと、メニュー表を出して食べたい物を選び始める。


 流石の雄介も、今の望の一言で今日一日考えていた事を思い出してしまったようだ。


 顔を俯けたままでいる雄介。


 そんな雄介に望は、


「お前はなんか食わないのか?」

「……へ? あ、ああ……食う! 食う! めっちゃ腹減ってるしな……」


 今まで顔を俯けていた雄介だったが、今の望の言葉で顔を上げ答える。


 きっともう雄介が完璧に何か隠している事に望は気付いていると思うのだが、望はそれ以降さっきの事については聞いて来ない。


 望は相手が隠し事をしていても聞き出さないタイプなのであろう。


「雄介、何か決めたのか?」

「まぁな……」

「じゃあ、店員さん呼んでいいよな? ワインとかは?」

「あ、今はそんな気分やないし……今日は遠慮しとくわぁ」

「そうか……じゃ、今日は食べ物だけでいいよな?」

「ああ、ぉう……」


 望達はそう決めると、食べ物だけを頼む事にしたようだ。


 だが、注文を頼んだ後の二人の間には会話が無くなってしまっていた。


 いったい望は今何を考えているのであろうか。 雄介はただそんな望を見つめるしか今は出来なかった。


 そして食事が運ばれて来てからも、二人の間には会話もなくなり、ただただ周りの音だけが聞こえるだけだ。


 人間っていうのはこうやましい事や何か隠し事がある時というのは無口になってしまうものだ。いつも話をする方の雄介がこうも黙ってしまっているのだから。


 そう何か口にしてしまうと、フッとした拍子に言ってしまわないかという心理があるからなのかもしれない。


 きっと望の方はそんな雄介にとっくに気付いているのに、何も突っ込んで来ないのだから逆に二人の間に会話が生まれないのであろう。

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