目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

ー天災ー48

 望はその後、何事もなかったかのように、雄介から視線を外すと、体を反転させ、物資の搬出へと向かおうとした瞬間、後ろから誰かに手首を掴まれた。


「……何だよっ! 離せっ! 俺とお前はもう他人同然なんだからよっ!」


 怒りと同時にそう言い放つ。そして、雄介に掴まれている手首を離そうとするが、雄介の方はその掴んだ手を離そうとはしない。寧ろ、もう離さまいと更に強く握っているようにも思える。


 雄介の方は頰を叩かれ顔を上げられないだけなのか、それとも望には顔向け出来ないという事なのか、顔は全く上げずに、


「今回の事はホンマにスマンかった」


 そう雄介は申し訳なさそうに言うと、今度は顔を上げ、望の視線へと合わせ、


「せやけど、俺だって……その……めっちゃ悩んで……出た答えやったし。その気持ち……分かってくれへんかな?」

「……分かる……分かる訳ねぇだろうがっ! いいから、とりあえず、この手を離せよっ!」


 そうだ。今は雄介にどんな事を言われても許す訳にはいかない。


 だから望は自分のありったけの力を振り絞って、雄介から逃れようとするが、日頃から鍛えている雄介はまったくもってビクともしない。本当になかなか離してくれようとしない雄介。


「お前、いい加減にっ!」

「……出来る訳ないやろ? この手、もう一生離したないんやからな」


 雄介は本気なのだろう。今度真剣な瞳で望の事を見つめているのだから。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?