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ー天災ー60

 次の日、目覚ましの音で三人は目を覚ます。


「んー……眠いなぁ……」


 和也は目を擦りながら半身を起こす。


 だが、和也がそうため息をついていると、望が気付いて言う。


「……そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!」

「分かってるって!」


 和也はそう言われて何かカチンときたのか、イライラしながらベッドの上から降りてくる。


 和也のイライラは理解できる。体を休めることはできているものの、地震以降、十分には休めていない。大きな地震があると、その後には必ず余震が続く。大きな地震を経験すると、僅かな揺れでも体が敏感になり、いつでも逃げられる準備をしてしまう。地震の他にも自然災害は恐ろしいものであり、人間はその恐怖に直面することで生存本能が刺激される。


 望も雄介の腕に触れながら、先程の和也の不機嫌さが理解できた。和也は普段温和な性格であり、文句を言うことは稀だ。


 和也の顔色が悪い。かなり疲れている様子だ。


「和也……大丈夫?」

「んー、まぁな……」


 とは言っても、和也はソファに完全に背中を預けている。


「……和也?」


 心配そうに声をかけると、望は和也の側に寄り添い、額に触れる。


「やっぱりか。 朝から様子がおかしいと思ってたけど、まさか、熱出してたなんてな」

「ぁ……望の手冷たい……」

「熱があるんだから、俺の手が冷たく感じるのは当たり前だろ。和也も今までの疲れが出て来たんだろ? 俺達だって、確かに体の方が限界なんだからさ……熱が出るって事は体が休みたいって言ってる証拠なんだし、今日はゆっくり休んでいろよ。後は俺や他のスタッフがやるからさ」

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