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ー天災ー88

「ん? 和也? 望ん事起こさんくてええのか?」

「もう、知らねぇよ!」


 和也がいくら起こしても望の方は起きて来てくれないらしく、和也の方は気持ち的に怒っているようにも思える。


「せやけど、起こさんとアカンのやろ?」

「いいんじゃねぇ? 怒られるのは望なんだし……」

「ほな俺が起こしてくるな……」

「ああ」


 そう言って、望の元に向かった雄介。


 もし雄介に望の事を起こせたならば、こう悔しい感じがするのは気のせいだろうか。その雄介の後ろ姿を視線で追ってしまう和也。


「望ー?」


 最初は優しい声で起こす雄介なのだが、やはり起きようとはしない愛しの恋人。


 雄介は仕方なさそうな息を吐くと、


「こうなったら、最終手段しかあらへんな?」


 そう望の耳元で囁き、


「望……朝やで……早よ起きないと遅刻してまうし」


 そう甘い声で望の事を起こすのだが、僅かに反応はするものの、望が起きてくる気配はなかった。


「まーだ……起きないんかいな。しゃーないな……もう一個の手段で……」


 雄介は横向きで寝ている望の体を仰向けにさせると、


「お姫様は王子様のキスで目を覚ますっていうのが定番なんやで……」


 そう望の唇に近付こうとした時に望は目を覚ましたのか、雄介と視線が合ってしまったようだ。


「お前なぁ、朝から何をする気だったんだ?」


 そう言いながら望は雄介の事を避け体を起こそうとしたのだが、突然雄介の腕に抱き締められる。


「……雄介?」

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