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ー天災ー150

 お風呂から上がると、雄介も望もベッドの方へと向かう。


 どうやら和也達はまだ帰って来てないようだ。二段ベッドの上の方に和也達の姿はない。


 そこにホッとすると、雄介が先にベッドに入って、望も後から入って横になる。


 ふと望が気づくと、雄介に抱きしめられていた。


「ホンマにスマンな……とりあえず、もう、明日で一旦望とはお別れやし、今日くらい望の温もりに浸らせてくれへんか?」


 何を先に謝ったんだろう? と思っていたら、どうやら抱きしめたことを謝ってきたらしい。だがもう望はそうやって雄介に抱きしめられることが嫌いではない。寧ろ好きなのだから謝る必要なんかないような気がする。


「ばーか……そんなことで謝ってんじゃねぇぞ。な、俺達の関係ってなんなんだ? 他人ではねぇんだろ? ならさ、別に抱きしめるだけで謝るな」


 そう望は雄介の両頬を両手で包むと見つめるながら言う。


「え? あ……ちょ……」


 望のその台詞に視線を外したのは雄介の方だ。しかも今の望の行動に顔も赤くしているのかもしれない。


 もうここは電気が消してあるからだ。と言っても寝室の方というだけで部屋の明かりは点いている。


 今はライフラインが大分復旧はしてきていて前までは二十一時になると節電の為に部屋の電気まで消されて暗くなっていたのだが、今はもう節電は解除されている。それに和也達もいずれここに帰って来るのだから今は部屋の電気は点いている状態だった。だから寝室の方は電気は消えているものの、そこには部屋に通じる扉がない為か部屋から電気の灯りが漏れているという位の明るさしかない。


 だから場所によっては光があるところとないところとあるという事だ。


 という事は一段ベッドの方にはあまり光が入って来ていないとう事なのであろう。


「スマン……って……」

「今度は何について俺に謝ってんだ? お前さ、俺に謝りすぎだ」

「あーえー……」


 そう望に指摘されて何も言えなくなってしまう雄介。


「あ、まぁ……そ、そうやんな……ホンマ、スマン……あ……」


 きっと心の中では「また、言うてもうた……」とでも思っているのであろう。


 そんな雄介に望はクスクスと笑い始める。


「ま、いいか……それが、お前なんだよな?」


 そう納得すると望は二段ベッドの天井へと体を向ける。


「ま、もう……今日は寝ようぜ。もう、なんだか今日は寝れるような気がするしさ」

「……ん? あ、せやな……」


 と二人はそこで瞳を閉じるのだ。


 今まで夜は悩みっぱなしで寝れなかった二人だったのだが、これで寝れるようになったのであろう。


 二人の寝息がいつのまにか聴こえてきていたのだから。

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