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ー天災ー155

 もういい。今の裕二の話はなかった事にしよう。


 そうだ! 今は雄介とは離れてしまっているのだけど、生きていれば心は繋がっているのだから、裕二が言う条件みたいなのを飲む必要はない。


 それに自分の彼氏を条件に出されて雄介を戻す為に、わざわざ裕二に雄介の事を抱かせる事はないだろう。その方がよっぽど嫌だと思った望は完全に裕二の言葉を無視してきた。


 もしかしたらそれは冗談なのかもしれないのだが、望は結構、冗談でも真に受ける真面目なタイプだ。


 暫くの間、休みとか合わなければ完全に雄介とは全く会えなくなってしまうのかもしれないのだが、たった数週間、雄介と会えていた日々はあった。そこで十分過ぎる程、雄介には幸せや生きてく楽しさを教えてくれたのだから、それはそれでいい。


 温もりだって十分に貰った。


 次会う日までの糧にもなった。


 そうだ生きてるのが楽しいとも思えた。


 要は雄介に生きがいを見つけてもらったという事だろう。


 別に望が死にたいと思った訳ではなく雄介に出会うまでは、こう毎日が同じような日々で平穏無事に暮らしているというのも良かったのだけど、ただ一度きりの人生なのだから何かこう仕事以外で楽しみも欲しかったという事だろう。


 確かにただただ平穏無事に送る生活もいいのだけど、その中には楽しみも喜びも悲しみも無い。


 だけど望に雄介っていこいう恋人が出来ただけで毎日が変わったような気がする。確かに毎日が大変にはなったようにも思えるけど雄介には喜びも悲しみも、そして楽しみも温もりも教えてもらったような気がする。


 平穏無事な生活もいいけれど波乱に満ちた生活もいいのではないかと思う。いい事もあれば悪いこともある。


 それが人生なのであろう。


 そして望の目の前でも、また新たなカップルが出来たらしい。


 今まで和也には沢山お世話になったのだから今度は望がその二人の事を見守って、そして二人が喧嘩してしまった時にはフォローして上げればいいのかもしれない。


 その二人の姿を見送り軽く微笑むとまた新たな決意をする望。


ー天災ー END


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