今まで一人寂しい思いをしていたのに、また寂しい思いをしなければならない。
「アイツと恋人同士にならなきゃ良かったぜ」
そう望は小さな声で呟くと再びパソコン画面の方に視線を移す。
「望、大丈夫か?」
「え? あ、ああ……まぁな」
そう望は答えるのだが和也の耳には望がヘコんでいるようにしか聞こえない。
「な、今日はパァーッと呑みに行かないか?」
「お前は奴と約束があるんんだろ? 悪いけど……俺にはお前等がイチャイチャとしている姿見てる余裕なんかないんだからな」
「ん? そうなの? ま、いいや……分かった! 俺も奴との約束をキャンセルするよ!」
「お前は本当にそれでいいのか?」
「ああ」
和也はそう笑顔で答えると裕実にメールを始める。すると直ぐに返事が来たらしく、
「いいってさぁ、たまには二人でどうぞ……だってよ」
「ああ、ぅん……おう……」
望の表情が気持ち的に変わったようにも思える。
こうやって望を誘ったのだから和也は今回の望との飲み会にある事を企てる。いや寧ろさっきからそれを考えていたのかもしれない、その上で望の事を誘ったのだから。
望と仕事を終えると近くにあるデパートの屋上のビアガーデンへと向かう二人。
今日は自宅には帰らないという気持ちでトコトン呑むつもりだ。
そう二人共、車を持っている。だから仕事の帰りに飲みに行くっていう事はしていなかったからだ。
病院近くの場所で飲むのなら家に帰らなくて済む。そして病院に戻れば寝れる場所はあるからだ。
それに病院で働く人間が車で事故や飲酒運転で流石に捕まる訳にはいかない。事故だって考えられるのだから今日はそのまま病院の方へと戻るつもりで飲みに来た二人。