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ー空間ー160

 そう雄介に聞かれて、フライトアテンダントは雄介に操縦席へ行けるドアの暗証番号を教える。


 普段は一般客には教えることはないのだが、きっと雄介の活躍を見ていたのであろう。だから教えたのかもしれない。


 雄介はその間も何かイメージトレーニングでもしているのか、ただ操縦席前のドアで考え事をしているようだ。


 何か良い作戦はないのだろうか。雄介の中では、きっと必死に乗客を助ける方法を考えているのかもしれない。


 ただ今は雄介一人だ。仕事なら沢山の仲間がいるのだが、どう一人で犯人のところに突撃しようかと悩んでいるのかもしれない。いや、今のこの状況だと、このまま一人で操縦席の方に向かっていったら命さえも危ういだろう。


 そうだ、雄介の中ではきっと自分一人が犠牲になっても乗客みんなが助かればいいと思っているのかもしれない。しかし、先程望に「命だけは落とすなよ」と言われたばかりなのだから、迷いも出ているのだろう。


 雄介は人の命を助けるという仕事をしている以上、自分が動かなければ誰が動くんだ、と思っているらしく、知識のない一般人に比べたら今は自分が動くしかないと思っているのだろう。


 しかし、操縦席の方は今どのような状況なのだろうか。機長はもちろん、副操縦士はどうしているのだろうか。犯人にやられてしまっているのか、それとも犯人に指示されて飛行機を操縦しているのだろうか。このドアの向こうで何が起こっているのか、まだ分からない状況だ。


 犯人に脅されて操縦していても、もし犯人が操縦している状況でも、乗客の命が危ないのは間違いない。


 以前見た外国でのハイジャック犯は、そのまま飛行機ごとビルへ突入していた。そんなことをされたら、本当に全員が生きられるか保証できない。それに大惨事にもなりかねない。


 雄介は大きく息を吸い込むと、何も内部の状況が分からないまま操縦席の方に向かおうとしたが、そこへ内線電話が鳴り響く。


 内線電話があるのは客席の一番前だ。

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