目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

ー空間ー161

 一番前に座っていたフライトアテンダントがその内線電話に手を伸ばしたが、フライトアテンダントだって一般人と同じ状況で変わらない。体を震わせているのだから。それに気付いた雄介はその電話に出ることにした。


 きっと、この内線電話は操縦席にいる犯人からなのだろう。いや、もしかしたら機長からかもしれないが、ここは気持ちが冷静である雄介が対応することにする。


「はい……」


 雄介がそう出ると、低い声で犯人が、


「お前誰だ?」


 と聞いてくる。


 雄介の思惑通り、その電話の主はどうやら犯人のようだ。しかし、何も考えずに思わず電話に出てしまったことで、雄介はどうしたらいいのか分からない。


 とりあえず雄介は時間稼ぎのために適当に何かを話し始め、その間に何か作戦でも思いつけばいいと思ったのかもしれない。


「俺はただの一般客やけど……。アンタは誰が電話に出ると思ったんや?」


 確かに雄介も操縦席での情報は分からないが、当然、操縦席にいる犯人たちもフロアのことは分かっていないだろう。


 当然、雄介がフロア内にいた犯人たちを捕まえたという情報も知らないはずだ。


 雄介はそこで考える。多分、操縦席側にいる犯人がフロアの状況を聞きに電話をかけてきたのだろうが、そこはもう雄介が犯人たちを捕まえてしまい、犯人たちがこの電話に出ることはできない。


 とりあえず今は一人が電話に出ているのだから、一人は空いているわけではない。雄介だって武道の達人ではない。だから二人いっぺんに掛かってこられたら無理かもしれないが、一人だけなら何とかなるかもしれない。


「俺たちの仲間を早く出さんかっ!」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?