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ー空間ー212

 そして顔を洗うために洗面所へ向かい、その後キッチンへと向かう。


 雨だからなのか、リビングがいつも以上に暗く感じる。


 雄介はリビングの灯りを点け、やかんでお湯を沸かしてコーヒーを作り始める。


 今日は望と一緒にいたい気持ちはあったが、その方が別れる時に辛いだろうと思い、雄介は頭を冷やすためにリビングへ降りてきていた。


 今、望と一緒にいたら体に触れてしまい、望を起こしてしまう可能性があったからだ。


 人間、出会いもあれば別れもある。色々な別れと出会いがある中で、恋人同士で本当に好きな者同士が離れるのは辛いものだ。


 そう思いながら食卓に座り、お湯が沸くのをぼーっと待っていると、やかんの音がリビング中に響き渡り、雄介は慌てて火を止める。


「今の音で望の奴……起きてへんやろか?」


 と、雄介は心配になった。


 雄介は考え事をしていて、やかんが音を鳴らすことを忘れていたのかもしれない。


 そして、雄介はインスタントコーヒーを作り終えると、再び食卓の椅子に座りコーヒーを啜り始める。


 やかんでお湯を沸かしている時よりも静かになってしまった部屋。


 唯一、聞こえてくるのは雨音とその雨粒が屋根に当たる音だ。


 なぜか雨の日は憂鬱な気分になる。ましてや今日は恋人と別れる日で、余計に憂鬱な気分になってしまうのだろう。


「あー、もう! アカン! ホンマ、こういうこと考えるのやめや! やめっ! まったく、自分らしくないやんか……」


 いつもは明るくて能天気な雄介だが、今日はどうしてもしんみりとしてしまい、自分に喝を入れる。

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