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ー空間ー218

 本当に相手のことが好きだから、嫌なこともしたくないし、喧嘩なんてもっとしたくはない。それに、せっかく手に入れた恋人なのだから、そう簡単には離したくはないという心の方が上なんであろう。


 そうまた雄介が考え事をしていると、望の方も着替え終えたのか階段を降りてくる音が聞こえて来る。


 雄介は立ち上がって車の鍵を持つとリビングを出る。


「ほい、車の鍵な」

「あ、ああ」


 そう、タイミングよくリビングの前に出てきた雄介に驚きながらも、望は雄介から車の鍵を受け取ると、玄関で靴を履き庭にある駐車場へと向かう。


 望が持ってきたスーツケースをトランクへと乗せると、望は運転席の方へと向かいエンジンを掛け、雄介は助手席の方へと座るのだ。


「なんや……自分の車やのに、助手席側やと変な感じするわぁ」

「だろうな」


 そう、望は一言雄介に返すと、アクセルを踏んで病院へと車を走らせる。


 今の時刻は朝の十時過ぎ。平日という事もあって、車は渋滞には引っかからずに済んだようだ。


 そして、三十分位車を走らせた頃、目的地である病院へと到着する望と雄介。


 望は駐車場へと車を止めると、


「着いたぜ」


 と雄介に声をかける。


「あ、ああ、ありがとうな」


 二人は同時に車を降りると、目の前にある病院の中へと入っていくのだ。


 そう、この病院は望にとってはあまりいい印象というのか雄介があの事件で行った場所でもあって、そういうところでは若干トラウマな場所に近いのか、一瞬、足が止まったのだが、ここは雄介の為にとでも思ったのか、直ぐに足を病院へと向けるのだ。


 そして、病院内へと足を踏み入れると、今日は前回の時とは違い平日だというのに本当に沢山の人々がいて、逆に目を丸くしている望。

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