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ー空間ー236

「ああ、まぁな……そりゃ、もう! 愛を込めて作ったしなぁ」


 そう笑顔で言う雄介。


「なら、この雄介の愛がこもった料理は和也には食わせねぇよ」

「おいっ! そりゃ、ねぇだろー! 俺だってなー、仕事して来てるんだから、めっちゃ、腹減ってんだぞー! だから、食わせてくれよー」


 そう半分は涙目で言う和也。だが、二人共ふざけているのは十分に伝わってくる。


 望の性格が雄介と付き合う前より明るくなってきたような気がするのは気のせいであろうか?


 前までこんなにも望が和也に対してふざけたことがあっただろうか? 多分、和也の記憶ではこんな望は見たことがないはずだ。


「せやせや、今回の異動はな、望の親父さんがやってくれたようやで。しかし、何で望の親父さんなんかな? だって、望の親父さんって医者やろ?」

「あー、それか? 前に聞いたことがあるんだけどさ……ウチの親父はどうやら、消防庁の官僚っていうのかな? そこら辺の人と知り合いだとかって言ってたような?」

「それ、ホンマかぁ!?」

「ああ……」


 望は前に裕二が言っていたことを思い出したようだ。


「あ! だからなんかな? 俺がこっちに戻って来れた理由っていうんは……ってさ、そういや、望の親父さん、何で俺らの仲知ってるん!?」


 それを聞いた途端、雄介は目を丸くして望を見つめる。


「それは前に俺が親父に言ったしな……つーか、正確には親父は分かってたっていうのかな?」

「……へ? それ、ホンマか!?」

「別に……うちの親父公認なんだから、気にすることじゃねぇんじゃねぇの?」


 そう雄介に言いながら望は目の前にいる和也の様子を見る。


 先程、望は和也におあずけを食らわせている。まだまだ望に許しをもらえていない和也は食事には一切手を付けていない。


 そして和也はまるで犬のように「早く許して……」というような表情で望を見上げていた。


 そんな和也の様子に望はひと息吐くと、


「……ったく、仕方ねぇなぁ。食べてもいいけどさ、味わって食うんだぞ。雄介が作ってくれる料理は美味いんだからなっ!」

「あ、ああ! マジで味わって食うからさっ! もう、許してっ!」

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