その時、望の部屋のドアが開かれた。
「望、雄介! 朝ご飯できたぜ!」
朝から元気のいい和也。しかし、望が着替えている姿を見てしまい「まずい!」と思ったのか、
「ゴメン……」
と一言だけ言うと、部屋のドアを閉めた。
「……ったく、なんであいつ気を使ってんだ? ただ俺が着替えてただけなのにさ」
望はそう雄介に漏らしながら着替えを終える。
「ま、そうやねんけどな……」
雄介はクスクスと笑うが、どうやら和也の気持ちも察しているのかもしれない。
「え? なんだよー。何か俺が悪いことでも言ったのか? だってさ、和也と俺は親友みたいなもんだろ? 別にいいじゃねぇのかな?」
「ま、まだ、望はよう和也のことわかっておらんみたいやね」
「はぁ!? 何言ってんだ? 何、和也のことわかってるようなこと言ってんだ? 俺なんかより和也といる時間が短いのにさ」
「何、朝からキレとんねん」
そうボソリと呟くと、雄介は頭を掻きながらため息を吐く。
「うるせぇなぁ!」
望はそう言うと、雄介のところまで行って何でかわからないが襟首を掴んでしまっている。
「なんで、テメェにそんなこと言われなきゃなんねぇんだよ!」
「ちょ……はぁ!? ホンマ、今日の望……なんか変やぞ? それこそ、どないしたん? 俺からしてみたらホンマ意味がわからへんねんけどな」
今までこんなことはなかったはずだ。今日の望は何だか様子が変な気がしてたまらない。何がどうして望がキレてしまっているのかさえわからない雄介。そんな望に戸惑っている。
「なんか、すっげぇ……ムカつくんだよなぁ!?」
「はぁ!?」
本当に今の望は言葉も言動も何が何だかわからない。
雄介は望が掴んでいる手を襟首から離すのは簡単なことだ。しかし、雄介はただ望のことを見つめるだけにとどめている。
そして今の望がどうしてしまっているのかを探っているのかもしれない。
「……ってか、今日の望……ホンマどないしたん?」
雄介は真剣に聞いてみた。
「ただ……お前の言葉が癇に障っただけだ……それでムカついたっていうのかな?」
「はぁ!?」
本当にその言葉だけで望をここまで怒らせたというのか。それだったら本当に意味がわからないところだ。