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ー雪山ー55

 それからして雄介は再び望がいるリビングへと戻ってくる。


「まだ、見とったんかいなぁ」

「あ、ああ、まぁな」


 雄介はソファへと腰を下ろすと、仕方なさそうにクラシックを聴く。


 部屋内はクラシックの静かな空間で、時がゆっくりと過ぎていく感じがする。


「やっぱ、アカン……眠くなってくるわぁ」


 雄介は、そのクラシックの音楽で眠さの限界に達し、両腕をソファの背もたれ部分に乗せて瞳を閉じてしまった。


 その雄介の様子に、望は再びため息を吐く。そして、雄介の反応を見て、テレビの電源を消す。


 流石の雄介も、それに気付かないわけがない。今まで聴覚に音が入っていたのに急に無くなったのだから。だから気になって、閉じていた瞳を開ける雄介。


「……へ? いきなりどうしたん?」

「お前がつまらなそうにしてるから消した」

「へ? 俺、別につまらないとは言ってないやんかぁ」

「寝るってことは、そういうことだろ?」

「そうやないって」

「じゃあ、どういう意味で寝たんだよ」

「あまりにも気持ち良すぎてなんかな? だってな、クラシックって睡眠効果もあるって言うやんか。せやから、眠くなってきただけやしな」


 雄介のその言い訳に、望はピタリと言葉を止める。


 確かに雄介の言う通りだ。クラシックの曲にもよるらしいが、曲目によっては睡眠効果や癒す効果があるということを聞いたことがある。


 望は静かに息を吐くと、


「んじゃあ、今日は昼寝でもするか? 俺がこんな状態じゃ、何処にも行けねぇしさ」


 その望の提案に、雄介は目をパチクリとさせる。


「……へ? 昼寝ってなぁ、お子ちゃまじゃあるまいし」

「たまにはいい機会なんじゃねぇのか? 体をゆっくりと休ませるにはさ」

「部屋の布団干してんで」

「なら、客間の布団でも持ってきてさー、そこの窓の近くにある絨毯の上で寝ればいいだろうよ」

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