さっき聞いていたクラシックよりも何故だか安心出来るのは気のせいであろうか?
そして雄介は宣言通りに望には一切手を出して来る気配はなかった。ただただ本当に望の体を抱き締めているだけだ。
雄介の方は熱もない状態なのだから、きっと寒いのであろう。望の足に自分の足を絡めてきている。寧ろ望からしてみたら、その方が気持ちいいくらいだったりする。
しかし、さっきから雄介の鼓動は聴こえて来るのだが雄介の声は一切聞こえて来ない。そこが心配になったのか望は雄介に声を掛けてみた。
「雄介……?」
「ん? 何?」
「いやな……やけに静かだなぁーって思ってよ」
「んー、ちょっとな……」
そう何か言いたそうな口ぶりだ。
「ん? どうしたんだ?」
「せやから、何でもないって……」
そう笑顔で答える雄介なのだが目は笑っていない。
「こんだけ長くいるんだ……俺がお前の行動とかを知らない訳がないだろ?」
望は一つため息を吐くと、
「ってかさぁ、何で、お前は俺の為に頑張っちまうのかなぁ?」
望は半身を起こすと雄介の方へと振り向き少し大きな声で言う。
「望……?」
と雄介は小さな声で呟くように言うのだが雄介の方も呆れたような息を吐いて、
「俺はお前の事が好きやから逆に頑張れるんや。お前がいなかったら、ここまで頑張るって事はしないと思うで」
雄介はそう言うと望の事を落ち着かせる為に望の体を再び抱き締める。
「望な、俺の性格分かってるって言うとるけど、全然分かってへんって。確かにな、俺はお前の事抱きたいって思うてんねんけど、望は今、調子悪いやろ? 流石にそんな奴に手を出す程じゃないしな。俺が黙っておったのはムスコさんを落ち着かせる為になんやって……ほな、分かったんやったら、今日はもう休もう?」
望は雄介のその言葉に言い返せなくなったのか、ゆっくりとシーツの波へと体を落としていくのだ。