目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

ー天使ー15

 その和也の言葉に、望は再び溜め息を漏らすと、


「ああ……そうだよ。今、琉斗を連れて帰って来た時に親父と会ったんだ。そん時に訳の分からねぇ親父の言葉にイラってしただけさ。あの親父、琉斗の姿を見て、俺と雄介の子供か? って聞いて来たんだぜー。って、どう考えても俺と雄介の子供の訳がねぇだろー。……ったく、怒りを通り越して、呆れたって……」


 その望の言葉に、和也は思わず笑いそうになった。しかし、ここで笑ったら余計に望を怒らせてしまうと判断し、必死に笑いをこらえた。


「なるほどなぁ。確かに、望と雄介の間には子供はできないよなぁ、それは当たり前だよな……」

「ホントだぜ……まったく……」


 今日、望が何度目の溜め息を漏らしたか分からないが、またしても溜め息をついた。


「ま、いいやぁ。これでイライラは多少取れたか?」


 和也の質問に答えず、望は午後からの仕事の準備を始めた。しかし、和也はそんな望の様子に気付いていた。


 一瞬ではあったが、望が席を立つ時、ほんの少しだけ微笑んでいたことに。


 確かに望は素直ではないが、こうして少しずつ表情を見せるようになってきた。それは、長年望と付き合ってきた和也だからこそ気付ける、ごく僅かな変化だった。


 望が席を立つと、和也もその後に続いて仕事へ向かった。それが、この二人にとっては当たり前の日常だった。


 仕事を終えると、望はふと呟いた。


「琉斗を迎えに行かないとな」


 そう漏らした後、今度は和也の方を向き、


「お前はどうすんだ? 先に駐車場で待ってるのか? それとも、俺と一緒に琉斗を迎えに行くのか?」


 和也は即答した。


「望と一緒に迎えに行くに決まってんだろー。ホント、望って子供のこと分かってねぇよなぁ。じゃあさぁ、俺が望でも俺の車でもいいけど、そこで琉斗と望のことを待ってるとしよう。知らない人が車に乗ってたら、ビックリするだろ? なら、望と一緒に行って、望に紹介してもらった方が子供は警戒しないんだよ」

「そういうもんなのか」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?