目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

ー天使ー16

「そうなんだよ。ま、いいや……とりあえずさ、その琉斗って子、迎えに行こうぜ」

「ああ、そうだな」


 望は和也の言葉で席を立ったのだが、


「あのさぁ、お前、裕実は大丈夫なのか?」

「ん?  裕実は大丈夫だよ。今さっき、アイツにメールを送っておいたからさ、もう、俺達の部屋の前で待ってんじゃね?」

「そっか……」


 望はそう答えると、和也と一緒に部屋を出て行った。


 すると、和也が言っていた通り、部屋の前には裕実が立っていた。和也は笑顔で裕実に声を掛けたかと思うと、次の瞬間、裕実の唇へとキスを落とす。


 だが、さすがの裕実もいい顔はせず、頬を膨らませて和也を見上げた。


「か、和也! 離して下さいよ! 嫌です!」


 そう言いながら、裕実は和也の胸を押し返す。


「……って、なんだよ。いいじゃねぇかぁ、俺達は恋人同士なんだからよー。こういうことしたってさ……」

「もう! 和也はやっていい場所とやっちゃいけない場所とわきまえないから嫌だって言ってるんですよ! これが和也の家なら、僕はこんなにも嫌がりませんよー。でも、今は家じゃないんですからね。ここは仕事場なんですから、場所を考えて下さい! って、僕は言いたいんです!」


 裕実にそう分かりやすく言われ、和也は珍しく暗い口調で、


「分かったよ」


 そう返すと、裕実から離れてしまった。


 その和也に対し、裕実は呆れたような、安心したような溜め息を漏らすと望の方へ顔を向け、


「さっき、話は全部、和也に聞きましたよ。琉斗君のことは僕達に任せて下さいね」

「あ、ああ……ありがとうな」


 望は裕実に向かい、素直にそう言った。


 その間も和也は肩を落としていた。裕実にあんなことを言われたせいで、どうやらしょげているらしい。


 望がドアの鍵を閉めても、和也は頭を俯けていた。


 その様子を見て、裕実と望は目を合わせて軽く微笑む。


 だが、望は和也の頭を軽く叩くと、


「ほら、琉斗のこと迎えに行くぞ!」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?