しばらく車を走らせていると、道沿いにレストランを見つけた和也が車を駐車場へと止めた。
「よし! 着いたー!」
その声に応じて、裕実や望と一緒に琉斗も車を降りる。
降りた直後、琉斗は涙目になりながら望を見上げて言った。
「望兄ちゃん……トイレー!」
「……へ? トイレ? あ、あー、トイレか……」
望は戸惑いつつも和也の方に顔を向ける。
「和也、琉斗がトイレだってさぁ」
「はいはい! 俺が琉斗をトイレに連れて行けばいいんだろー」
和也がそう言った直後、琉斗は望の足にしがみついてきた。
「望兄ちゃんとトイレに行く!」
「……へ? 俺と?」
望はこんな状況に慣れていないのか、明らかに困惑している。
「って、琉斗……」
和也は琉斗の身長に合わせてしゃがみ込み、
「そんな年になって一人でトイレできねぇのか?」
「できるよ!」
琉斗は自信満々に答える。
「なら、望とか俺とかと一緒に行かなくてもいいじゃねぇかぁ」
「でも、僕は望兄ちゃんと行きたいの!」
「でもなぁ、望兄ちゃんはそういうことに慣れてないんだよー。だから、俺と一緒に行かないか? ちょうど俺もトイレに行きたかったとこだしよ」
和也がそう提案すると、琉斗は少し考え込み、
「仕方ないなぁ、和也兄ちゃんもトイレに行きたいんなら、今回だけは和也兄ちゃんと一緒でいいや……」
その言葉に、和也と望は思わず目を丸くした。
さっきまで素直でいい子だと思っていたが、どうやら違うらしい。明らかに口調までも変わっている。
「んじゃ、行くか!」
和也は琉斗の手を取ろうとしたが、琉斗は手を引っ込め、
「僕、一人で行けるから大丈夫!」
「そっか……なら、先に行っちまうぞー!」
和也はそう言うとファミレスに向かって走り出す。
その姿を見て、琉斗は追いかけるどころか望の方を振り返り、
「和也兄ちゃんって、大人気ないね……」
そう言い捨ててから、ようやく和也の後を追い始めた。
琉斗の言葉に望と裕実は思わずクスクスと笑い出す。
「和也は琉斗君に嫌われてるのか、それとも気に入られてるのか、どっちなんでしょうね」