「ん? そうなのか?」
「そうなんですよー」
裕実は望に向かい、ニコリと笑う。
「俺には、和也は琉斗に嫌われてるとしか見えねぇんだけどなぁ」
「子供の場合、確かにストレートな言葉を出す場合と、今の琉斗君みたく知恵がついてくると、大人を試してくる子もいるんですよ」
「そうなんだな」
「僕や望さんの場合、琉斗君からして『この二人には何を言っても自分の言葉とかを普通に言わないと通じない』とか思ってしまってるんでしょうね。だけど、和也の場合は『どこまでワガママが言える』とか確かめているんだと思いますよ。子供は見た目では判断しないんですよね。心の中を見てますからー。大人は見た目で判断しがちですが……子供は心を見てるんです。琉斗君からして、和也はきっと話をしても大丈夫なのか? と試してるんだと思いますよ」
「そうなんだー。ま、いーや……とりあえず、俺達は先に店で席を取っておこうぜ」
「そうですね」
二人は急いでお店の中へ入り、席に腰を下ろした。
それからあまり時間が経たないうちに、和也と琉斗がトイレから出てきたらしく、望達の姿を探しているようだ。
和也は首を左右に動かしながら周囲を見渡している。
そんな和也の姿に気付き、裕実は和也に向かい手を上げた。ようやく和也は望達がいる場所に気付き、その席へ向かってくる。
「……で、何を頼んだんだ?」
和也は望達がいる席に来ると、迷いもなく裕実の席の横に腰を下ろした。
だが、琉斗はどうやら迷っているらしく、望の顔と和也の顔を交互に見上げている。
その琉斗の様子に気付いた和也は、琉斗に視線を合わせて言った。
「琉斗は望の隣がいいだろ?」
そう言われたものの、琉斗はまだ迷っているのか首を横に傾げ、『んー、んー』とうなっていた。
「じゃあ、俺の隣に座るか?」
そう和也が質問しても、琉斗は首を傾げたままだった。
「あ! 分かった! 誕生日席がいいんだな!」
和也は琉斗が何を言いたいのかが分かったらしく、大きな声と共に手を叩いた。
「誕生日席ってなんだ?」
望が和也に尋ねた。