そう望は言いにくそうに答える。
「何がだよ……。それじゃ、答えになってねぇんだけど?」
「あのさぁ、ここまで言えば少しは分かるだろ?」
「分からねぇから、聞いてんだよ」
和也はその答えに溜め息を吐き、
「ま、今はとりあえず、琉斗が居るからさ……後で話すよ」
望は何とかその場を切り抜けようとしていたのだが、和也は琉斗の傍へと近寄り、
「なぁ、琉斗……俺と裕実が一緒に居る訳を教えてやってもいいぞー」
その言葉を聞いた琉斗は、目を輝かせながら和也を見上げる。
和也と琉斗のやりとりを見た望は、大きな溜め息を吐いた。きっと和也を止めるのを諦めたのだろう。
しかし、そんな望の様子を見ていた裕実が、ズカズカと和也の前に歩み寄り、
「子供に向かって、僕達のことを話さなくてもいいんじゃないんでしょうか? 子供に対して悪影響だと和也は思わないんですかね?」
そう怒った口調で言う。
「……ったく」
裕実の言葉に、和也は溜め息を吐き、
「さっきからさぁ、お前、いつも以上に俺につっかかって来てるみたいだけど、なんなんだよ! 今日のお前の態度っていうのはさあ! 久しぶりに俺はお前に対してムカついてるんだけど……」
「別に……意味はないですよ」
「意味が無いってことはねぇだろ? 意味があるからこそ何かに対して怒ってるんだろうからな。なら、意味無しに怒る必要はねぇ訳だしな。何か俺に対して言いたいことがあるんだろ? 恋人同士なんだから、言いたいことがあれば言えばいいじゃねぇかよ。俺は前に隠し事が嫌いって言っただろうが……」
最初はウジウジしている裕実に対し、和也はイライラしていた。だが、だんだんと裕実の心理が分かってきたのか、和也は裕実の立場になって考え始める。
今まで怒っていた裕実も、和也の言葉に何かを感じ取ったのだろう。裕実は和也を見上げ、瞳を潤ませながら、
「ごめんなさい……和也があまりにも琉斗君のことを構い過ぎていたから、和也は僕なんかより、琉斗君の方が好きなんだと勘違いしてたんです」