望はそんな琉斗に再び溜め息を漏らす。

　きっと自分には子供の心理なんて一生分からないのだろう。そんなことを思っていたのかもしれない。

　だが琉斗が走って行ってしまい、望はその場で呆然としていた。その時、和也が声を掛けてきたのに気が付くと、望は顔を上げる。

　望が見上げた先には和也の笑顔があった。

「ったく……。どうしたんだ？　潔癖症って程でもねぇけど……それに近い望が、地面にお尻を着けてまで座って落ち込んでいるなんて珍しいじゃねぇか」

「なんだ……和也か……」

　子供嫌いな望でも、琉斗に嫌われてしまったことがショックだったのか、そう暗く答える望。

「その言いぐさだと、望は俺じゃない誰かを期待してたんだろうけど……ま、とりあえず、今は俺だ。んで？　何落ち込んでるんだ？」

「別に……大したことはねぇよ……」

　そう言うと望はその場に立ち上がり、周りをキョロキョロと見渡し始める。

　望はきっと「嫌いだ！」と言っていた人物を探しているのであろう。

「望！」

　和也は再び望に向かい笑顔を見せると、自信あり気な表情をし、

「望のことはよく知ってるって言っただろ？　琉斗と何かがあったこと位分かってんだからな。琉斗ならさ、裕実と一緒に居るから大丈夫だ。さっき、琉斗が走って行った時に俺が押さえたんだよ。それで訳を琉斗に聞いたんだ。だから、望が落ち込んでいる理由が分かるっていうのかなぁ？」

「そうか……」

　望はいつもにも増して暗い声をしながら立ち上がる。

「なら、これ以上……俺の心の中に入ってくるなよなぁ」

　和也にそう言うと、車が置いてある場所へと向かって行ってしまう望。

「望！　琉斗との関係がそれでいいのかよ！　今の状態じゃ、何も変わらないだろうが！　つーかさぁ、望と雄介の関係を琉斗に明かして、それで琉斗とはバイバイなのかよ！　それじゃあ、マズいんじゃねぇの！？　お前達は琉斗のお母さんに、琉斗のことを任されたんだろ！」

「俺は最初っから、そういう気はなかったんだよ……。雄介が勝手に連れて来たんだからなぁ。　俺は元から子供が苦手なのを知ってたんだしよ」

「だけど……雄介がいない間、琉斗はどうするんだよ！？」