「悪かった。確かに雄介の言う通り、今の俺達の関係には関係のない話だよな。でも、今はこのままお前と一緒に居られないような気がしてな」
「喧嘩みたいなのをしたからか?」
そうストレートに聞かれ、望は雄介から視線を反らしてしまう。
「ああ、ま、確かにそうだな」
「今のは喧嘩やなくて、意見の言い合いやろ? そこは喧嘩と勘違いしてもらっちゃ困んねんけどな。なぁ、望……俺んこと好きか?」
「あのなぁ。今の話にそれ関係あんのか!?」
「今はもうさっきの話はしとらんよ。今はもう、俺達の関係の話をしとるし」
「そりゃ……」
「って、望は何でこう二人の関係について話す時は人と瞳を離してまうんやろな? こっちが疑いたくなるやんかぁ」
「って! それって、どういう意味だよ!」
望は雄介の腕を振り払い、雄介のことを睨み上げる。
「その言い草だとさ、俺がまるで浮気してるような言い方じゃねぇかぁ。お前だって、知ってんだろ? 俺の性格をさ、なら、そんな疑うって言う意味が分かんねぇんだけど!」
「人が真剣に聞いておるのに、視線を反らすからやって!」
「なんだー、お前! 和也にでもなったつもりなのか? つーか、お前が俺のことを疑うなんてこと、思ってもなかったぜ。だいたいさぁ、何かあんのか? 俺が浮気したっていう証拠でも!」
「あ、それは……ないねんけど。せやけど、俺は一度も望が浮気したってことを言うてへんやんか。そう思うってことは浮気してるんと違ゃうの?」
その最後の雄介の言葉に、流石の望も頭に血が登ったのだろう。
早々にベッドから降りると、地下室から出て行ってしまう。
「……ったく! 雄介の奴……意味が分からねぇ! 今日の俺は流石に雄介には頭に来たぞ!」
だが望は部屋を出たものの、どうしたらいいか分からないようだ。
まさか、こんな喧嘩をするなんて思っていなかったからだ。そして望自ら部屋を出るなんてことは今までなかったことでもある。
今日は雄介は休みの日で、雄介は家に居る。一日、顔を合わせない訳にはいかない。
望は仕方無しに上着を羽織ると、和也の家に向かうのだった。