「望がそうしたいんなら、ええねんけどなぁ」
そう無理強いはしない雄介なのだが、望はそこに突っ込みを入れるのだ。
望は玄関に入って直ぐに靴を脱ぎ終えると、
「お前なぁ、前にも言っただろ? そこが優柔不断な所なんだよ! って……。 俺と風呂に入りたいんなら、ハッキリと言えばいいだろうがぁ」
「せやけどなぁ、望が嫌って言うんなら、俺はどっちでもええってことなんやっていう意味な訳で……」
望は溜め息を吐くと、
「じゃあ、一緒には入らない! それでいいんだな? 本当のところはどうなんだよ? 雄介は俺と一緒に風呂に入りたいのか?」
望は念を押すように雄介の顔を見上げる。
その顔は言葉には出していないのだが、寂しそうな表情をしていた。
「本当のところは……やな?」
二人はリビングへと向かいながら望は雄介の顔を真剣な目つきで見上げる。
そんな望に対し雄介は望から視線を離すと瞳を宙へと浮かせ、
「ホンマは一緒に入りたいんやけど、ほら、望が嫌やったら、俺は別々に入ったらええしーって思っとる」
「なら、一緒に入ろうぜ」
望はそう言うと、いきなりリビングで着ているシャツのボタンを外し始める。
いつもはそんなとこでは脱ぎ始めない望なのだが、きっと望自ら雄介と一緒にお風呂に入りたいことをアピールしたかったのであろう。
望の場合、言葉より先に行動に移すタイプなのかもしれない。
「ちょー、待った! とりあえず、パジャマとか用意してから入ろうか?」
「ああ、そうだったな」
望は雄介にそう言われ思い出したかのように二階へとパジャマを取りに向かう。
雄介の場合ジャージにTシャツで寝る為、わざわざ二階に取りに行かなくてもさっき洋服に着替えたばかりで、雄介の寝着はソファの背もたれに掛けてあった。
雄介はそれを手にすると、先に脱衣所へと向かう。
雄介が脱衣所で洋服を脱ぎ始めていると望が脱衣所へと入り望も服を脱ぎ始めるのだ。
「やっぱり、望の体は細いよな」
「細過ぎて筋肉はないんだけどな」