「そりゃな……」
「じゃあさぁ、何で急に医者になろうと思ったんだ?」
「正直なとこ、不純な動機もあんねんけど、望の手伝いが出来たらええかなぁ? って思ったんや。確かに、望の方が何倍も先輩ねんけど、火事場のことに関しては多分、俺の方が知識が上やと思う。ほんでもって、俺は暇な時に望の部屋にある医学書とか読ませてもろうてたから、そういうことに関してはむっちゃ強くなった気がするし」
「まぁ、それだけじゃねぇけどな。とりあえずは安心した。お前が頭が良さそうで……でもって、体力もありそうだからな」
「そりゃな……って、まさか、望!? 消防士は体力馬鹿だと思ってたと違ゃうやろな?」
そうふざけて言いながらも雄介は恐る恐る聞くのだ。
「やべっ……雄介が言ってるまんまだぜ」
「ホンマかいな……まぁ、しゃーないわなぁ。消防士として働いたことがない奴には分からない仕事やからなぁ」
「まぁ、そういうことだ」
そう話をしていると、やっと二人は家の駐車場へと辿り着く。
雄介は駐車場に車を止めると、車から降りる。
「今日は寝るの遅くなってまったし、風呂はシャワーでええか?」
「俺は基本、シャワーだから平気だけどよ。雄介はどうなんだ?」
「俺は構わへんで……」
「そっか……なら、今日はシャワーで、だな」
「って言うってことは……一緒に入ってもええってことか?」
車から降りた望を雄介は後ろから抱き締める。
「だ、誰も……そんなこと言ってねぇだろうがぁ」
相変わらずそんな話になると、顔を赤くし雄介から視線を反らしてしまう望。
「話の流れ的に、そう言っておった気がすんねんけど? 俺の気のせいやったらええわぁ」
何故かそう言うと、雄介は望から離れ、先に部屋へと入って行ってしまう。
そんな雄介の後ろ姿に望は一つ溜め息を吐くと、
「明日も早いんだから……こんな遅くなっちまったし、二人で入った方が効率がいいんじゃねぇのか?」
決して望は雄介と一緒にお風呂に入りたくないわけではない。ただ単に素直になれないという性格が邪魔しているだけだ。