そんな話をしていると、車はいつの間にか自分達がよく知っている景色へと変わって来ていた。

　さっきまで太陽の恵みで明るかった世界も、今は人工で作り出されたネオンで街は明るい。

　そんな中、雄介の腕の中にいる琉斗が起きたようで、目を丸くしながら雄介のことを見上げる。

「起きたか？」

「んー……何で僕は車の中にいるの？　遊んでいたはずなのに……」

　雄介は琉斗の言葉にクスクスと笑うと、

「そっから寝ておったんやもんなぁ。そりゃ、確かに何で今車の中に居るかが気になるもんなのかもしれへんなぁ。説明すると長くなんねんけどー？」

　そう言うと、雄介は琉斗に説明をし始める。

「そうだったのー。なら、もう、和也兄ちゃんとかはいないんだねぇ」

「せやな」

「バイバイ出来なかった」

　そう残念そうに言う琉斗。　そんな琉斗に雄介は、

「ま、しゃーないやんか……今度会った時にちゃんと言えたらええんと違う？」

「でも……」

「今日は琉斗はめっちゃ疲れていたみたいやし、しゃーないと思うで……」

「和也兄ちゃんとか怒ってないかなぁ？」

「そんなに心配せんでも大丈夫やって……。和也兄ちゃん達は優しいしなぁ。そんな事で琉斗のこと嫌わんし」

　琉斗はやっと納得したのか笑顔になると、大きな声で返事をする。

「ま、とりあえず、もう直ぐ着くし、大人しくここにおるんやで……」

「うん！　分かった」

　琉斗はそう返事をすると、雄介の膝の上にちょこんと座っている。

「あ！　お母さんの病院が見えてきたー！」

「見えて来たんなら……もう直ぐやろ？」

「うん！」

　そんな会話をしていると、望達が住む家に到着する。

「夕飯どないする？」

「あ、そうだなぁ？　今日はもう疲れたしピザにでもするか？」

「……へ？」

　今まで望の口からそんな言葉は出たことがなかった筈だ。　雄介がいれば必ず遠回しに『雄介が作ったご飯が食べたい』と言うのだが、今日はそうではないようだ。

「望はそれでええんか？」

「ああ。たまにはピザとか食いたくなったしさぁ」

「ま、望がいいんなら、それでええねんけどな……。琉斗はそれで大丈夫か？」