「はい! もちろん! 吉良先生には期待していますから! 雄介が、吉良先生は本当にいい先生だって、この病院を紹介してくれたんですよ」
美里のその言葉に、望と和也は思わず目を見合わせ、驚いた表情を浮かべた。
確かに美里の家からこの病院が近くて便利だったのかもしれない。しかし、雄介が美里のことを直接この病院に紹介していたとは思ってもみなかったのだ。
「そうなんですよ。雄介がこの病院を紹介してくれて、しかも、雄介の恋人がいるってことも聞いていましたから」
美里の言葉に、和也は何か気になったようだ。
「あのー、桜井さん……? 今の言葉からすると、雄介の恋人が吉良先生だってご存知なんですよね その……美里さんは、雄介と望の関係について、どう思っているんですか?」
和也は恐る恐る美里に尋ねた。その質問に望は顔色を変える。
「別にいいと思うわよ。人を好きになることに、男女なんて関係ないと思うわ。それに、今二人が幸せなら、私は全然気にしないわね。二人が私の目の前でイチャついていても構わないくらいよ」
美里の言葉に、和也は望の顔を見てにやりと笑った。
「だってさぁ。良かったじゃねぇか」
「アホか! 俺が雄介と人前でイチャつくわけがないだろ!」
望の反論を受けて、今度は和也が美里の方を向き直り、軽く肩をすくめて言った。
「望はこんなこと言ってますが……望は雄介のことが本当に好きなんですよ」
「そうみたいねぇ。だって、言葉では否定してるけど、顔に『雄ちゃんが好き』って書いてあるもの」
美里の冗談に、望は真っ赤になって視線をそらした。その様子を見て、和也は小声で笑いをこらえる。
しかし望は一度咳払いをして気を取り直し、真剣な表情で言った。
「とにかく、今は雄介のことは二の次だ。今は桜井さんの手術が何より大事だからな」
「まぁ、確かにそうだな」
さっきまでふざけていた和也も、急に真面目な顔に戻り、美里に向かって力強く言った。
「今は雄介のことが心配ですけど、とりあえず桜井さん! 手術を無事に終えて元気になりましょう!」
「分かりました。では、よろしくお願いしますね」
「はい!」
望と和也は同時に真剣な声で返事をした。