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ー天使ー122

「はい! 分かりました! 僕に望のことは任せてください!」


 そう和也は言うと、少し申し訳なさそうな声で、


「望の性格を変えることができたのは、本当は雄介なんですけどね」

「確かにそうかもしれないけど、君も望のことに関してフォローしてくれているんだろう?」

「まぁ……一応は……。それを望がどう思っているかは分かりませんけどね」

「じゃあ、和也君、望のこと、よろしく頼むね」


 裕二はそう言うと、その場から去っていった。


 和也は裕二の後ろ姿を見ながら、


「やっぱりすごいよなぁ、お前の親父さんって……。何か、何もかもお見通しって感じだしよ」

「あ、ああ、まぁ、そうだな」

「何か、うらやましいなぁ、親父さんがいるって。前にも言ったけどさぁ、俺には親父がいなくて、母親に育てられたから、親父ってのを知らないんだよ。もし俺に親父がいたら、俺の親父もあんな感じだったのかなぁ?」


 和也の言葉に、望は何か聞きたそうな顔をしていたが、聞いていいのか迷っているようだった。


 望が何も言わないのを不審に思ったのか、和也は歩きながら望の顔を覗き込む。


「わぁ! なんだよー! いきなり顔を近づけてきてー」

「望が俺に何か聞きたそうだなぁって思ってよ」

「え!? あ、まぁ、な……」

「ま、聞きたいことは分かるけどさぁ。俺は別にそれを聞かれても今は大丈夫だぜ」

「そっか……。ならさぁ、聞いてもいいかな?」


 望は少し遠慮がちに和也に言う。


「ああ! 大丈夫!」

「じゃあ、あのさ、前から確かに和也には親父がいねえって言ってたけど……いつからいなかったんだ?」

「それは……本当に小さい頃なんだけどさ。俺が小学校に上がる前かなぁ? 事故で親父を亡くしてるんだよ……。しかも、最悪なことに、その時、俺も親父と一緒だったんだ。あれは、親父が車で俺を保育園まで迎えに来た帰りにな。俺だけは助かって、親父は死んだんだよ。雪で路面が凍結してて、それで車がスリップして、壁にぶつかりそうになって、親父が俺のことをかばって死んだのさ。誰かが助けに来るまでの間、俺は車の中で親父に抱き締められていたんだけど、親父の体はだんだん冷たくなっていっちまったんだよな」


 和也は一息吐くと、

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